DVから逃れて安心、じゃない。IKEAの展示が問う、家庭内暴力とホームレス問題の関係

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失業・病気・災害など、ホームレス状態になる経緯は人それぞれだ。「家」は言わずもがな生活の基盤だが、ときには抗うことができない、努力だけではどうしようもできない状況によって、人は家を失ってしまう。

オーストラリアでも状況は深刻だ。同国では、毎晩12万人以上の人々がホームレス状態にあり、車やテント、友人宅のソファなど「家」とは呼べない場所で避難生活を送っているという。そして悲惨なことに、オーストラリアで女性と子どもがホームレス状態になる大きな原因の一つが「家庭内暴力」だ。

そうした問題への早急な解決が叫ばれる中、IKEA Australiaがシドニー・テンペの店舗で、家庭内暴力とホームレス問題に焦点を当てたキャンペーン「This is not a home(ここは家ではない)」を2024年6月5日から7月31日まで開催している。

Image via IKEA Australia

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過去にも難民の家を展示するなど、深刻な課題をクリエイティブなキャンペーンで人々に広く伝えてきたIKEAは、企業として「誰もが安全で安定していて安心でき、ニーズを満たす『家』と呼べる場所を持つべき」だと考えている。今回のキャンペーンで、IKEA Australiaは、実際のストーリーを共有することで問題をより自分ごと化してもらい、現場の緊張感やストレスを伝えることを試みた。

店内には、パートナーの家庭内暴力によって子どもと共に家を追われ安全な居場所を失った女性のほか、似たような境遇の人たちの生活状況を示すディスプレイが設置され、オーストラリアで多くの人が直面する厳しさを明らかにした。

このキャンペーンでIKEA Australiaに協力している慈善団体Save the Children Australiaは、オーストラリアで暴力から逃れる子どもや女性に安全な家庭環境を提供。さらに、福祉や住居、子どもの教育や雇用、法的支援、他のサービスとの連携など、精神的かつ実践的な支援を30年以上にわたり行っている。

IKEA AustraliaのCEOであるミルヤ・ヴィイナネン氏はIKEAのウェブサイトで次のように述べている。

現在、オーストラリアでは女性の4人に1人以上、また子どもの3人に1人が10歳までに家庭内暴力を経験しています。IKEAのゴールは、家庭でより快適な日常生活を実現することです。

家庭内暴力を受けて家を追われた人たちにとって、暴力から逃げきったことが事態の収束になるわけではない。子どもはなおさら、安住の地を持てないことで心身に深い影響を受ける。

このキャンペーンでホームレスの人々の厳しい生活状況に対する認識が高まって支援が広がれば、少しでも多くの被害者が快適な家庭生活を再び取り戻せるかもしれない。

【参照サイト】IKEA Australia and Save the Children launch ‘This is not a home’ to reveal real-life living conditions facing thousands
【参照サイト】IKEA Australia & Save the Children Team Up to Address Homelessness
【参照サイト】IKEA’s Campaign Highlights Domestic Violence and Homelessness
【参照サイト】ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について/厚生労働省
【関連記事】IKEAがショールームに「シリア難民の家」を並べた理由

Edited by Megumi

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