オランダで注目される「水中凧」発電。再エネ移行への追い風となるか

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世界中で再生可能エネルギーへの移行が進む中で、風力や太陽光、水素発電に次ぎ、海中の潮の流れを活用する「潮流発電」が注目を集めている。

オランダのスタートアップ・SeaQurrent社が開発したのは「TidalKite(ティダルカイト)」と呼ばれる水中凧(すいちゅうだこ)だ。これは、海底に設置された土台に、多翼設計の凧がワイヤーで繋がれた装置で、潮流によって動くことで発電する。凧が潮流の力を受けると、シリンダーが引かれ、運動エネルギーが電気に変換される仕組みだ。潮流が変わるたびに凧の位置を調整し、最も効率的にエネルギーを取り込めるように設計されている。

浅瀬や潮流の弱い水域でも効率的な発電が可能なSeaQurrent社の水中凧(TidalKite) Image via SeaQurrent

SeaQurrent社の水中凧の最大の特徴は、従来型の潮力発電の仕組みと比べ、一つの発電機あたり、はるかに広範囲の潮流エネルギーを捕捉できることだ。これにより、浅瀬や流速の遅い地域でも効率的にエネルギーを生み出すことができ、様々な場所での利用が可能となる。また、複数の凧を連携させることで、発電効率をさらに高めることができるという。潮流は、風力や太陽光と比べても一貫した発電が期待できるため、天候に依存しない安定したエネルギー供給を可能にする。

このプロジェクトは、将来的には5メガワットの発電能力を実現し、オランダ沖のアメランド島をエネルギー中立に導くことを目指している。ティダルカイトによる発電コストは2024年8月時点で1キロワット時あたり約23.2円と、平均約2.9〜8.7円である太陽光や風力よりも高価なものの、技術の進展により、将来的にはコストの削減が期待されている。

現在、水中凧はオランダ北部のワッデン海アメランド島沖で試験運用されている。

アメランド島沖で試験運用のために導入される水中凧(TidalKite) Image via SeaQurrent

SeaQurrent社は、2015年にオランダ北部フリースラント州グラウで設立され、2022年には投資ラウンドでEIT InnoEnergy、PMH Investments、Invest-NLらから480万ユーロ(約7億6,800万円)の資金を調達。さらに2024年6月には、ワッデン基金(Waddenfonds)から250万ユーロ(約4億円)を調達した。今後さらなる技術開発を進め、土壌への固定方法の改善や、生態系への影響の監視・影響を最小限に抑えるための対策なども行う予定だという。

EUでは2023年、再生可能エネルギー指令に基づき、2030年までの再生可能エネルギー目標を32%から42.5%に引き上げた(※)。EUは近いうちにこれをさらに45%に引き上げることも目指しており、今後再エネ移行へのさらなる技術革新と投資が見込まれる。様々な地理・気候条件においても活用できるこうしたテクノロジーにはますます注目が集まるだろう。

Renewable energy targets
【参照サイト】SeaQurrent – TidalKite System
【参照サイト】Met ‘onderwatervlieger’ moet Ameland binnenkort elektriciteit krijgen uit eb en vloed

Edited by Megumi

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