ウェブページを見やすく、わかりやすく。色弱やディスレクシアの人用のカスタム拡張機能

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2024年9月6日、カナダ・トロントのディスティラリー地区に「大多数の人には見えない」看板が設置された。一見すると緑と赤の点が集まっているようにしか見えない看板。ここに書かれた文字を見ることができるのは色弱(※1)の人だけだ。

※1 色盲、色覚異常、色覚障害、色弱、色覚多様性などさまざまな呼び方があるが、ここでは特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)に倣って「色弱(しきじゃく)」とする。

9月6日の色覚異常啓発デーにこの看板を設置したのは、トロントに本社を置くTDバンクである。同社は、彼らがリリースしているウェブ上のアクセシビリティを向上させるChrome拡張機能「TDアクセシビリティ・アダプター」のプロモーションとして、このキャンペーンを行った。

TDアクセシビリティ・アダプターは、視覚障害や色弱、ディスレクシアなどがある人たちのウェブ体験を向上させる拡張機能で、ウェブページの表示を、それぞれのニーズに合わせて見やすく、理解しやすくカスタマイズすることができるというもの。この拡張機能を使用すると、下記のようなことが可能になる。

  • 彩度/コントラストなどの調整
  • ディスレクシアの人が読みやすいフォントへの変更
  • リーディングガイド(自分が読んでいる行以外がグレー表示になり、どこを読んでいるのかがわかりやすくなる機能)
  • モノクロモード
  • フォントサイズの変更
  • 行間や文字間のスペース調整
  • リンクの強調表示(ウェブページ上のすべてのリンクを点線で囲む機能)
  • ハイライトタイトル(ウェブページ上のすべてのタイトルを枠線で囲む機能)
  • GIF画像などのアニメーションファイルや動画の自動再生停止

こちらはもともとTDバンクの社内ツールとして開発されたものだったが、これをChrome拡張機能として広く利用できるものとしたそうだ。

WebAIMの2022年時点のデータによると、障害のある人にとってアクセシブルだと言えるサイトは全体のわずか3%(※2)。また、AudioEyeが約4万の企業ウェブサイトを分析したところ、 スキャンした200万ページ全体で、1ページあたり平均37個のアクセシビリティエラーが見つかったという(※3)

ウェブサイトを開く──そんな普段の何気ない行動をするたびにストレスを感じ、問題解決のために余分な労力を割いている人々がいる。誰かを排除してしまわないためには、表には見えないデザインにも丁寧に向き合う必要があると、私たちメディアとしても考えさせられる事例であった。

※2 WebAIM Million(WebAIM)
※3 2023 Digital Accessibility Index(AudioEye)

【参照サイト】How the TD Accessibility Adapter Works(TD Bank)
【参照サイト】TD Accessibility Adapter(Chromeウェブストア)
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