2024年9月9日、樹木の伐採に関して批判が相次いでいた神宮外苑の再開発について、見直し案が発表された。主な内容は、当初予定されていた伐採本数743本から619本への変更や、新植本数の増加。しかし、見直し案に対しても「樹木や自然環境にストレスを与える」との声があがっているのが現状だ。
このように都市の緑化を計画するとき、私たちは「“人間が”都市の自然を増やす」という働きかけを前提とすることが多い。しかし、人間だけを主体としたデザインは、今日の気候危機を引き起こす要因となったアプローチでもあるとして危惧されているのだ。
そこで注目されているのが、人間以外の存在にも光を当てた、More-than-human(人間以上)という観点からのデザインやアプローチだ。これを都市環境において実験的に体現しているのが、オランダのデザイナー二人組によるプロジェクト「Urban Reef」である。セラミックや粘土、コーヒーかす、などのバイオ素材から3Dプリンターによって生成されるオブジェ・Reefを植物やきのこ類の住処としてデザインするプロトタイプを開発している。それぞれのデザインには、自然のアルゴリズムを取り入れているという。
例えばRain Reefと名付けられたプロトタイプは、雨水の排管と地面との繋ぎ目としてセラミック製のReefが作成された。既存の都市構造に合体するかのようなデザインが特徴的だ。雨水を確保しその土地の生物多様性を向上させる方法を模索したという。
その結果として、Rain Reefが設置された場所では、設置されなかった場所と比べて気温が約2℃下がり、局所的に湿度の高い土壌が生まれた。新たな生育環境の創出や、ヒートアイランド現象の緩和にもつながる効果が観察されたのだ。
ほかにも、高校の校庭にReefを設置した教育プログラムや、スズメが姿を消しつつある課題に対し、巣を模したReefを設置することでスズメとの共生方法について模索する取り組みなどを実施してきた。
このように、住処の提供を通じて都市の自然環境を再生することがUrban Reefの役割だ。けれども、それぞれのプロトタイプの最終形態は誰も知らない。Reefはあくまでも土台であり、そこからどんな植物やきのこ類が、どのように生えてくるのか、どんな生き物が住み着くのかは、“人間以上”の生き物次第なのだ。
私たち人間はReefを通じて、そこに立ち現れる、人間以上の存在が主体となった生態系の有り様を目にすることができる。彼らの行動に委ねてみることで、人工空間が大半を占める都市の構造を解きほぐし、自然界と調和する姿を想像し直すことができるのではないだろうか。
【参照サイト】Urban Reef
【参照サイト】Clay, Organic matter by Urban Reef
【参照サイト】The “urban reef” concept aims at making cities more biodiverse
【参照サイト】神宮外苑地区まちづくり
【参照サイト】神宮外苑の樹木伐採は743→619本に 三井不動産が見直し案「植樹も大幅に増やす」 工事本格化へ
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