衣類は製造過程や廃棄において、環境に大きな影響を与えている。国連機関によると、ファッション産業は世界のCO2排出量の2%から8%を占めているという(※)。
そうした背景から、近年は生産者だけではなく消費者の気候変動に対する意識も高まり、環境に配慮した製品づくりに取り組むブランドが増えている。ブラジルの最大手カジュアル衣料ブランド・Malweeは、大気中のCO2を吸収するTシャツを、今年のロンドン・ファッションウィークで発表した。
ポルトガル語で木を意味する「árvore」から名付けられたTシャツ「Ar.voree」は、着用中にCO2を吸収する。Tシャツを洗濯すると、吸収されたCO2が洗濯洗剤と反応し、炭酸水素ナトリウムに分解される。この過程で、生地に含まれる吸収剤は再充電され、Tシャツを着用するたびにCO2を吸収、また洗濯して分解するというプロセスを繰り返すことができる仕組みだ。
Malweeはシンガポールを拠点とするスタートアップ企業・Xinterraと提携し、AIと高度な実験を組み合わせることで、「COzTERR」と呼ばれるテキスタイル技術を開発した。Malweeは2024年後半にAr.voreeのTシャツを発売する予定で、Tシャツ1枚で12.6グラムのCO2を吸収でき、25枚で1本の成木と同量のCO2を吸収することができると主張している。
シンガポールのブランド・Kemunnaもまた、同国の「緑豊かな『ガーデンシティ』」というビジョンをなぞらえて、Tシャツの初コレクションにCOzTERRAのテキスタイル技術を導入。Tシャツに近未来的な「森」を描いた。
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このチャレンジは、環境保全に具体的な変化をもたらすことができる製品を求める消費者に対して、よりファッションへの関心を高めるきっかけとなるだろう。衣類が製造・廃棄されるときの環境負荷問題が解決されるわけではないが、今後Tシャツに“CO2吸収“機能が表示されるようになったら……消費者はファッションが持つ新たな可能性を発見するかもしれない。
【参照サイト】A major Brazilian and a fledgling Singapore brand both unveil CO2-capturing t-shirts
【参照サイト】Moda sustentável: A revolução da camiseta Ar.voree
【関連記事】CO2を閉じ込める、藻で染めたTシャツ
Edited by Megumi