CO2を閉じ込める、藻で染めたTシャツ

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私たちは普段、携帯や車、ペンのインクに至るまで、生活のあらゆる場面で「黒い物」を目にしている。当たり前のように日常に溢れている黒に染められた雑貨や服。実は、それらが環境や健康に悪影響を与えていることをご存じだろうか。

世の中の様々なものは通常、石油を燃やした「カーボンブラック」と呼ばれる染料を用いて黒に染められる。このカーボンブラックの素となる石油は、現状、不毛地帯のオイルサンドで地面を採掘することで抽出される。石油を燃やすことで、多量の温室効果ガスが大気中に放出されるだけでなく、採掘の際に植物が地面から引き抜かれることも多いことから、生態系も破壊されているのだ。その染色プロセスは、サステナブルとは程遠い。

そんな現状を変えるべく、イギリスを拠点とするアパレルブランド「Vollebak」が立ち上がった。アメリカのバイオマテリアル専門スタートアップ「Living Ink」の協力のもと、Vollebakは、カーボンブラックではなく、黒い“藻類”(※1)”を使って黒色のTシャツを生み出す技術を開発した。

※1 海藻など、光合成を行うもののうち陸上植物を除いたもの

Black Algae T shirt

image via Vollebak

製造過程でCO2を排出するカーボンブラックとは対照的に、藻類は成長過程でCO2を吸収し、光合成によって生成された酸素を大気中に放出する。成長過程で吸収されたCO2は、Tシャツの状態でおよそ100年にわたって閉じ込められ続ける。これは新たな形の「炭素の固定化」だ。

さらに、Tシャツに用いられるほかの素材も、適正に管理された森林から産出した木材をつかった「FSC認証」取得のユーカリやブナの木など、100%植物由来。埋めると、約12週間で土に還る特性を持っている。まだ開発途中のため、完全に黒いTシャツというよりは、濃いグレーのような色合いだが、通常のTシャツと同じ性能でありながら、環境への負荷が非常に小さいTシャツが完成した。

Black algae Tshirt

image via Vollebak

同ブランドは、100年以上変化がなかったアパレル業界の色の製造工程に革命を起こすことを目指し、持続可能な素材の開発に取り組んでいる。その技術は企業秘密にすることなく、オープンソースで公開。他のアパレルメーカーにも取り入れもらうことで、業界全体を変えていきたいと考えている。

世界で、そして日本でもアパレル業界の“サステナブル化”が進む今、藻類由来の染料は、今後注目のトピックの一つになっていくのではないだろうか。これからのアパレル業界の動きから目が離せない。

【追記:2021/8/30】記事公開当時、「Tシャツの状態で100年間CO2を吸収し続ける」という趣旨の記載をしておりましたが、正しくは、「藻の状態のときに吸収したCO2を、Tシャツに100年にわたって閉じ込め続ける」でした。訂正し、お詫び申し上げます。

【参照サイト】Vollebak
【参照サイト】LivingInk
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Edited by Tomoko Ito

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