「結婚は?子どもの予定は?」男性が面接で聞かれたら。オランダ企業の実験が問うジェンダー平等

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「結婚や出産の予定は?」──就職面接でこんな質問をされたら、どう感じるだろうか。スキルや経験ではなく、プライベートな事情に焦点が当てられることは、決して珍しくない。こうした質問は女性に対して投げかけられることが多く、職場におけるジェンダーギャップを浮き彫りにしている。

こうした状況を実体験してもらおうと、オランダの大手小売業者・bol(ボル)は3月8日の国際女性デーに合わせて「Flip the Script(台本をひっくり返したら)」キャンペーンを展開。就職面接におけるジェンダー不平等の現実を浮き彫りにした。

男性社員たちは、リアルな面接の場面を再現するためにカメラの前に呼び出され、実際に女性が受けがちな質問を受けた。例えば、「お客さんとの会議中、意見は言わずにただ微笑んでいるように求められたことはある?」「仕事と私生活のバランスをどう取る?」といったものだ。すると、彼らは質問に戸惑い、ときに苦笑いを見せた。


この実験により、男性社員たちはジェンダーバイアスがどのように女性のキャリアを阻害するかを実感したようだ。彼らは、この経験を通して自らの言動を見直すきっかけにもなったと語った。

オランダはジェンダー平等が進んでいる国として認識されることもあり、世界経済フォーラム(WEF)の2024年度の報告によると、146ヶ国中28位と上位に位置している(※1)。しかし、職場での不平等は依然として存在しているのが現状だ。

例えば、2021年のデータによると、オランダの全体のパートタイム労働率は48%であり、女性の70%がパートタイムで働いているのに対し、男性は28%にとどまっている(※2)。さらに、女性の管理職比率は30%に満たず、依然として格差が続いている(※3)。また、オランダ政府の調査では、6人に1人の女性が経済的に自立できる収入を得ておらず、女性の収入が最低賃金の70%未満であるケースも報告されている(※4)

こうした現状を踏まえ、bolはマネージャー層の男女比を半々にしたり、技術職における女性の割合を増やしたりするなどの取り組みを進めている。実際にこれらのプログラムは成果を上げており、2021年に男女平等の積極的な推進を開始して以来、上級管理職に占める女性の割合は32.9%から43.3%へと増加したそうだ(※5)

bolのキャンペーンは、ジェンダー・バイアスに光を当てると同時に、男性が「Ally(アライ)」として行動する重要性も強調している。アライとは、マイノリティの立場を理解し、支援し、共に不平等をなくすために行動する人々を指す。例えば、会議で女性の発言が遮られた際に「一人ひとりの意見に注目しよう」と声を上げる、育休取得を男女ともに推進するなども重要なアクションになるだろう。

bolの取り組みは、ジェンダー平等を制度だけでなく、日々の意識や職場文化の中にも根付かせていく必要性を強調するものだ。組織が主体的に環境を整えることはもちろん、個々の気づきや対話が変化の起点となる。小さなアクションの積み重ねが、多様性が尊重される社会への一歩につながるのではないだろうか。

※1 男女格差(ジェンダーギャップ)指数ランキング(世界経済フォーラム2024年版)MEMORVA
※2 Kassamedewerkers werken het vaakst in deeltijd Central Bureau voor de Statistiek
※3 Netherlands – Employed women being in managerial positions: From 40 to 64 years Trading Economics
※4 Improving women’s position in the Dutch labour market Government of the Netherlands
※5 Flip the script: be an ally bol.

【参照サイト】Flip the script: be an ally
【参照サイト】What happened when men attempted to answer questions that women often face in job interviews
【関連記事】「これを平等と呼びますか?」“ジェンダー先進国“アイスランドの女性が一斉に仕事をやめた日
【関連記事】ジェンダー不平等(男女不平等)

Edited by Megumi

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