スペインの書店がAIと考えた「総理大臣になるための読書リスト」

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「17歳の私が、将来総理大臣になりたいと思ったら、何をすべきだろうか?」

そんな問いに、いまや生成AIは頼れるアドバイザーとなっている。「毎日ニュースチェックをする」「SNSで政治について発信してみる」など今すぐできるステップから、「政治家出身者が多い大学への進学」「自分の政治ビジョンを持つこと」など、将来を見据えて行動することを提案してくれるのだ。

しかし、AIのアドバイスに従っているだけで、私たちは本当に「なりたい自分」にたどり着けるのだろうか。

そんなAI依存型の学びではなく、むしろAIを活用して人々の主体性を引き出すツールを、スペイン最大級の書店チェーン「カサ・デル・リブロ(Casa del Libro)」が発表した。「A unos Libros de Distancia(あと数冊の本の距離で)」というキャンペーンでお披露目された検索システムは、一人ひとりが持つ目標を達成するために、「読むべき本」を教えてくれるのだ。

例えば、特設サイトで「大統領になりたい」という目標を検索すると、洞察力を養う『星の王子様』、リーダーシップを身に着ける『兵法』、歴史的視点を養う『サピエンス』など、政治関連だけではなくジャンルを超えた本148冊がリストアップされる。これは、ChatGPTなどを駆使したAIツールが、25万冊以上の蔵書から選出した読書リストだ。おすすめされた本は、同書店のオンラインショップからも購入可能で、一度にすべての本を購入できなくても、「買い物カゴ」機能で保存しておくことができる。

このキャンペーンでは、多種多様な目標を達成するための手段として「読書」を位置づけ、本を通して主体的に学び、考えることを促している。即時性や効率性が求められる現代において、AIを取り入れながらも、あえて「時間をかけて読む」という体験を推奨しているのだ。

ローンチイベントでは、「スペイン初の女性大統領になる」という目標を持つ10代の女の子が首都マドリードの国会前に登場した。AIが推薦した148冊の本に取り囲まれたビジュアル的要素だけではなく、スペインを代表する4人の著名作家が登場したことにより、多くのメディアで報道され話題を呼んだ。

「A unos Libros de Distancia」を通して、カサ・デル・リブロはAIの力を借りながらも、人が主体的に学ぶきっかけとしての読書を提案している。即答や効率が重視される今だからこそ、時間をかけて読むという行為が、自分自身と向き合う力を育むのかもしれない。

【参照サイト】A unos Libros a Distancia
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