ノーベル賞に「気候変動」部門があったら?Ecosiaが1.8億円を投じ、財団へ創設を提言

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平和、文学、化学、医学、物理学。これらは1901年にノーベル賞が設立された当初の分類だ。人類の知識を切り拓いた画期的な発見・研究を称賛するために設立されたが、現在はこれだけではない。実は後に、ある分野が追加されたのだ。

それが、経済学。提案当初はノーベル財団によって拒否されたものの、世界的な課題の変化を受けて1969年より導入された。アルフレッド・ノーベルが遺言に託した「人類に最大の利益をもたらした人々に賞を与える」という目的において、時代の変遷と共にその利益の定義も変化していくものと言えるだろう。

では、現代において何が人類の“利益”に貢献するのだろうか。

この問いに対し2025年12月10日、ノーベルの命日であるこの日、「気候と地球の健康に関するノーベル賞(Nobel Prize in Climate and Planetary Health)」の創設が提唱された。提案の主導者は、植樹に貢献できるドイツの検索エンジン・Ecosia(エコジア)。同社は初回の賞金として、他のノーベル賞と同額の100万ユーロ(約1.8億円)をすでに公証人に預託済みだ。ノーベル委員会が2026年の賞設立に合意すれば、即時に賞を授与できる態勢が整っている。

この賞の狙いは、気候変動対策における卓越したリーダーシップを、科学や文学、平和活動と同等の世界の晴れ舞台へと引き上げることにある。21世紀において、人類が依存する地球の生命基盤を守ることこそが、ノーベルの理念を最も忠実に体現する行為であるという、戦略的かつ倫理的な問いかけがここには込められている。

新たな賞の創設には高い壁があるものの、歴史的先例が存在する。前述の経済学賞だ。同賞はスウェーデン国立銀行の支援と時代の後押しによって設立に至った。これは、ノーベル賞が決して不変ではなく、社会の要請に応じてその射程を拡張できる余地を示している。今回の提案はこのモデルを踏襲し、Ecosiaや賛同者が支援、スウェーデン王立科学アカデミーが選考を行う体制を構想しているとのこと。

授賞対象は、個人、組織、コミュニティまで幅広く設定。具体的には、実証済みの解決策を加速させる「実践的なガバナンス」、持続可能なビジネスを拡大する「繁栄と市場の拡大」、多様な視点を統合する「共通基盤の構築」の3カテゴリーが提案されている。

現在、ノーベル財団は「新しい賞を導入しない」との公式方針を維持しているが、Ecosiaはノーベル賞授賞式で受賞者たちが座る椅子を模した「空席の青い椅子」を製作し、気候対策という課題が世界の晴れ舞台で然るべき席を与えられていない現状を視覚的に訴えている。この動きには、気候活動家やドイツ・ローマクラブなどの各界リーダーからも支持が寄せられている。

気候ノーベル賞の創設は、単なる新たな名誉の創出ではない。誰の行動を称え、何を社会の「成功」として位置づけるのか。気候変動対策を、善意や努力の延長線ではなく、世界が名誉ある成果として位置づけ直すことで、行動を後押しし、その加速を促す強力な触媒となりうるだろう。

【参照サイト】Climate Nobel Prize
【参照サイト】Ecosia’s €1M offer to create a Climate Nobel Prize|Ecosia YouTube
【参照サイト】Our €1M offer to create a Climate Nobel Prize|Ecosia
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※ Cover image from Climate Nobel Prize Homepage

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