ごみを減らし、資源を循環させ、環境負荷を下げる。そんな社会のあり方に、今や異論を唱える人は少ないだろう。だが「自分の住む町でそれが実際に起きているか」と言うと、話は別だ。個人の暮らしの中では実践できても、最終的なごみの行方は、まちの分別ルールやリサイクル設備に左右されてしまう。こうしたまちのシステムは、すぐに変化することはないのだ。
では、なぜ進まないのか。その背景には、自治体が抱える構造的なジレンマがある。人口減少や多様化する住民ニーズに対応するなかで、役場の業務量は増え、日々多忙を極めているのが実情だ。こうした状況の中では、どんなに環境に良い取り組みであっても、自治体が新しい仕組みを取り入れて運用することは難しい。さらに、地域には長年培われてきた暮らしや関係性がある。土地の文脈を理解しないまま進められる資源循環は、地域にとって負担にもなり得るだろう。
そこで必要とされるのが、ゼロ・ウェイスト®︎の知見を持ちながら、自治体や地域の声を汲み取り、手間のかかる調整ごとを一緒に引き受ける実務者だ。一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンが2026年4月から始動するプログラム「ZERO WASTE FUTURES」は、そんな役割を担う人を育てる試みである。
【3/20〆切】自治体と共にゼロ・ウェイスト®実装へ。3ヶ月の人材育成プログラム「ZERO WASTE FUTURES」第0期募集開始
地域と真摯に向き合い、社会の基盤を整え直すためにはどんな「人」が必要なのか。そして、新プログラムを通じてどんな未来を描くのか。同代表理事の坂野晶さんに、その背景を聞いた。
話者プロフィール:坂野晶(さかの・あきら)
日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町の廃棄物政策を担うNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー元・理事長。地域の廃棄物削減の推進と国内外におけるゼロ・ウェイスト普及に貢献。2019年世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)共同議長。2020年より一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンにて循環型社会のモデル形成に取り組む。2021年、脱炭素に向けた社会変革を起こす人材育成プログラムGreen Innovator Academyを共同設立。2023年より株式会社ECOMMITに参画、2026年日本初のChief Circularity Officerに就任。世界経済フォーラムが選ぶ2025年のYoung Global Leaders。
地域と協働してみえてきた「伴走者」のニーズ
複数の地域で廃棄物削減の現場に立ち会ってきた坂野さん。そこから見えてきたのは、ノウハウや技術だけでは乗り越えられない壁だった。良い仕組みが社会に存在していても、それを回す「人」が現場にいなければ、計画は絵に描いた餅に終わる。
自治体の外と中、理論と現状。そのギャップを埋めるプログラムはなぜ生まれ、どんな学びを目指すのだろうか。
Q. 今、このタイミングで立ち上げるに至った背景やきっかけをお聞かせください。
ゼロ・ウェイスト・ジャパンとして一定数の地域で廃棄物削減の伴走をしてきましたが、ここ数年で、ゼロ・ウェイスト®︎を地域で広げることに対する社会的な需要が着実に高まっていると感じています。それは、しっかりと伴走すればゼロ・ウェイスト®︎を実装できる可能性を秘めた地域が増えてきていることでもあり、私自身がその需要を確信したことが、立ち上げの理由の一つです。
一方で、現時点でも当団体だけではその需要に応えきれないと感じています。これまでサーキュラーや資源循環という広い観点からの講座やプログラムは、様々なものを他社や他団体と共創してきたのものの、それだけでは、ゼロ・ウェイスト®︎を実践的に進める力を育むためには不足する要素も多いことが分かってきました。
「プログラムで学んで終わり」ではなく、修了後に仕事の一つとして実践し、将来的には一緒に働くことができる実務者を育てたいという思いで立ち上げたのが、今回の「ZERO WASTE FUTURES」です。

自治体職員向けの研修の様子|Image via 一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン
Q. なぜあえて、自治体を支える「人」の育成に着目されるのでしょうか?
今回、「伴走者」というポジションの人を育てることを重視しています。地域で何か変化を起こすために、まず大事なのは地域の中にしっかりと根ざして、「これを実践していこう!」と旗を振る人物です。
しかし私自身も、日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言を行った上勝町に約5年暮らしながら、地域におけるゼロ・ウェイスト®︎のさらなる推進を図って活動していたからこそ、中心的な人物一人だけで頑張ることの難しさも限界もよく知っています。その人が諦めることなく走り続けるには、地域の中での体制はもちろん重要ですが、自治体の外と中を行き来して、様々な角度から実装を継続的に支える役割がとても大事だと思っています。
Q. 本プログラムに参加することで、どんな人が、どんな学びを得られるでしょうか?
プログラムの設計において重視したのは、世界の潮流を見る「鳥の目」と、地域の現場を見る「虫の目」を持ち、それらを行き来しながら立体的に地域を捉えられるようになることです。その上で、特定の地域にマッチする施策を提案できるよう既存の事例を学び、フィールドワークでは実際の現場に入って現状を体感する合宿形式の研修を実施する予定です。
こうした内容のプログラムなので、地域単位でゼロ・ウェイスト®︎を実装したいけれど、どのように始めれば良いか分からない方や、すでに地域の中に入っているけれど、自治体とどう付き合っていくべきか分からないと感じている方にとって、糸口を見つける機会になると思っています。
また、既に異なる領域で自治体に関わっていたり、すでに伴走者としての役割に長けていたりする方で、ごみのことも扱えるようになりたい方は、廃棄物の専門知識を獲得できるはずです。さらに、環境問題に取り組みたくても、パッションだけでは地域を広く巻き込むことが難しいと壁を感じている人にとっても、思いを下支えする知識や周囲の巻き込み方のポイントなどを学べる場になると思います。
誰も切り離せない「ごみ」だからこそ、地域が変わる
ゼロ・ウェイスト®︎に取り組むことは、地域課題のほんの一端にすぎない。それは決して、地域課題を一瞬で解決するものではないのだ。
それでも、生活する限り誰ひとりとして無関係ではいられないのが「ごみ」というテーマであり、コミュニティの結びつきを再構築する力がある。主役である住民が成功体験を積み、地域の「強み」を育んでいくために、コーディネーターはどう動くべきか。
Q. 坂野さんが考える「ゼロ・ウェイスト・コーディネーター」とは、どのような人物ですか?
信念を持ちつつも「伴走者」として、自治体や地域の人たちが力を発揮し、ゼロ・ウェイスト®︎に向けて活躍できるように場を仕立てる人が、ゼロ・ウェイスト・コーディネーターであると思っています。
本プログラムでは、土台になるような知見や分析力・考察力などを鍛える機会を提供します。そのためには、参加者一人ひとりの強みを伸ばしていくことも必要です。それぞれのあり方で多様な伴走者が育ってほしいです。
Q. 第0期生たちが全国に散らばり、活躍し始めたとき、日本の地域はどのように変わっていくと想像されていますか?
ごみは誰しもに関係することなので、ごみにまつわる「何か」が地域で動くことは、実はすごく波及効果が大きいと思っています。ゼロ・ウェイスト®︎を進めるプロセスで、地域における新たなソーシャルビジネスが生まれたり、地域のつながりが新たに育まれたり強化されたりすることで、福祉サービスの向上につながることもあります。すでに国内外で、ゼロ・ウェイスト®︎が持つ可能性を広く発揮している地域は生まれています。
もちろん、そうした効果はすぐに生み出せるものではなく、「これをやればOK」という正攻法があるわけでもありません。でも、だからこそ、ゼロ・ウェイスト®︎に取り組む地域が増えることは、地域のレジリエンスが強化され、コミュニティの特長が育つきっかけにもなると思っています。
編集後記
2026年の今、地域が置かれている状況はシビアだ。経済も社会も縮小していく中で、環境への配慮は、ともすれば生活を苦しくするコストになりかねない。坂野さんが「ゼロ・ウェイスト®︎で地域がすぐに良くなるわけではない」と語った点は重要だ。この現実から目を背けて「環境にいいこと」を地域に持ち込むのは、身勝手な行為になりうるだろう。
だからこそ、伴走に徹する存在が大切だ。地域を消費せず、地域と共に悩み続ける覚悟を持った実務者が、このプログラムから育つことを期待したい。
プログラム概要
| プログラム名 | ZERO WASTE FUTURES |
| 日程 | 2026年4月25日(土)〜8月1日(土) |
| 会場 | 都内およびオンライン |
| 定員 | 約10名 |
| 応募資格 |
※ 初回(4月25日)、中間合宿(6月13日〜14日)、最終発表(7月25日)の現地参加は必須条件 |
| 料金 | 法人500,000円(税別) 個人300,000円(税別) ※ 支払い期日:2026年4月15日(水) ※ どちらも1人あたりの金額 ※ 対面開催時にかかる宿泊費、交通費、食費などは各自負担 ※学生である場合やその他経済的理由等により全額の支払いが難しい方を対象とした特待制度あり。面談時に相談を。 |
| 詳細 | |
| お申込み | 下記リンクよりご応募ください https://forms.gle/HiQqT6mKJujt6r816 |
| 締切 | 一次締切:3月20日(金)23:59 二次締切:3月25日(水)23:59 ※ 一次締切までの申込者を優先的に面談予定 ※ 応募多数の場合、一次締切で募集を終了する可能性あり |
| 主催 | 一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン |
※ ゼロ・ウェイストは一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンの登録商標です。
【参照サイト】自治体のゼロ・ウェイスト推進を支える専門的「伴走者」を育成するプログラム「ZERO WASTE FUTURES」第0期受講生募集!
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