自社の環境負荷削減の取り組みを、積極的に発信するべきか、安易には発信しないべきか。今、この狭間で揺れる企業は少なくない。
サステナビリティ推進が求められる中で、一部の取り組みは、環境配慮を謳いながらも実態が伴わない「グリーンウォッシング」であるとして社会から批判的な声があがっている。すると同時に、グリーンウォッシングに陥ることを恐れて自社の取り組みをあえて公表しない「グリーンハッシング」も増えているという。約85%の企業が気候変動対策を継続または拡大している一方で、その多くが法規制やバッシングを恐れて情報発信に慎重になっていることが明らかになった(※)。
こうした企業による沈黙は、一見すると「実際には環境負荷を減らしているのだから問題ない」「適切なリスク回避」と捉えられるかもしれない。しかし企業が発信を止めると、その活動の価値が社内外で認識されにくくなり、予算や投資が減少。その結果、実際のインパクトも弱まり社会全体で「サステナビリティは成果が出ない」との考えが強化されるという。つまり、環境問題に向き合うプレーヤーが沈黙することは、自らの企業環境を苦境に立たせる可能性があるだろう。
だからこそ重要となるのが、グリーンウォッシングにならない誠実な情報発信の方法を見出すこと。その指針の一つとなるのが、2026年3月末、クリエイティブ業界の気候変動アクションを支援する非営利団体・Creatives for Climateと、B Corp認証の運営組織・B Labが共同で公開したガイド『GreenSHOUTING Guide』だ。

GreenSHOUTING Guideは英語版のみ公開中(2026年4月6日時点)|Image via プレスリリース
同ガイドが目指すのは、戦略と証拠を土台に、課題も含めて情報を共有することで、業界全体の基準を引き上げ、システムチェンジを加速させること。強固なサステナビリティ戦略と、主張を裏付ける証拠データを揃えた上で実践すべき情報発信のフレームワークとして、以下の7つのダイヤル(調整弁)を提案した。ガイドの中では、各項目について企業の具体例も掲載されている。
- トーン(Tone):ブランド独自の声を活かす。必ずしも硬い表現である必要はない
- シンプルさ(Simplicity):専門用語を避け、誰もが理解できる言葉で伝える
- 豊かさ(Abundance):「犠牲」ではなく、サステナブルな選択がどう生活を豊かにするかに焦点を当てる
- 破壊的革新(Disruption):現状の不合理なシステムを打破する姿勢を示す
- 文化(Culture):ポップカルチャーなどを適切に取り入れ、人々の関心と結びつける
- 感情(Emotion):データだけでなく、感情に訴えかけるストーリーテリングを行う
- 謙虚さ(Humility):「100%完璧」ではないことを認め、改善点や失敗も共有する
例えば、衣料品ブランドのパタゴニアは、「2025年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標を掲げていたものの、オフセットに依存している点に誠実に向き合い、あえて目標を「2040年までにネットゼロ実現」へと修正した。こうした目標の修正を正直に伝える姿勢が、GreenSHOUTINGの要素を備えた例として紹介された。
ただし、この7つを満たせば必ずサステナビリティの推進が成功であるとも言えない。仮に、「正直であれば環境負荷が十分に削減されなくてもよい」という誤った認識が広がれば、社会全体として環境問題の解決からは遠ざかる。「不誠実さを覆い隠すための透明性」という矛盾した状態を防ぐためには、データや成果の公開にとどまらず、企業が行動を改善し続ける継続性も欠かせない要素だろう。
今回公開されたガイドは、「沈黙は現状維持を望む勢力に力を与えることと同義である」と位置付けた。これからの企業コミュニケーションに求められるのは、優れた成果の誇示でも、沈黙でもない。企業と社会の間で情報の非対称性を解消し、本質的なサステナビリティの市場を生むための誠実な情報開示とそれに基づく行動が必要であり、それこそが揺るぎない信頼を築く橋渡しとなるだろう。
【参照サイト】GreenSHOUTING Guide|Creatives for Climate
【参照サイト】Silence Is the New Greenwashing: B Lab & Creatives for Climate Launch Framework to Break Corporate Paralysis|B Corporation
【参照サイト】沈黙こそが新たなグリーンウォッシング|一般社団法人B Market Builder Japan
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