テレビを見ていると、天気予報のコーナーが始まり、こんな音声が流れてきた。
「明日も熱中症にお気をつけください。では続いて、なぜこれほど暑さが長引いているのかを、気候変動の専門家に聞いてみたいと思います」
そんな風に日常の天気と気候変動との関わりまで説明する天気予報は聞いたことがない、と思うだろうか。しかしこのような番組が実在する。
フランスのテレビ局であるFrance2・France3において、気候科学者による気象予報が放送されているのだ。20時から放送されていた5分弱の天気予報を、気候変動について解説する番組「Journal Météo-Climat」に2023年から変更した。
番組内では、はじめに通常通りの天気予報が伝えられる。続いて、その天気に関連する長期的な気候パターンやその変化について、気候科学者と協力して解説が行われるのだ。この番組を担当する気候エディター・Audrey Cerdan氏は、2024年のジャーナリスト・オブザイヤーを受賞するなど、国際的に高い評価を得ているようだ。
同放送局は、ニュースレポーター自身が天気予報を伝える際にも、その背景にある気候変動を伝えるなどの取り組みを行ってきた。これに加えて、気候科学者が番組に登場することで、より専門的な情報を発信する場になっている。
日本でも「天気予報を通じて気候変動について伝えていくべきだ」という声が、気象予報士から上がっている。2024年6月5日に「『日常的な気象と気候変動を関連づけた発信』を目指す共同声明」が発表され、気候変動について発信する放送枠の獲得に向けて動き出している。
全国の気象予報士・気象キャスター130人に対する調査によると、90%以上が「気象情報の中で気候変動に対する危機感を持っている」と回答し、80%以上が「気象情報の中で気候変動についてもっと伝えるべきだ」と考えているという。しかし、現状ではそれが実現していない。その背景としては、放送時間の長さや専門性、視聴者や社内の無関心、などが指摘されたそうだ。
もし、自宅でテレビを見ていて、気候科学者による気候変動の話題を含めた天気予報の番組が始まったら、チャンネルを変えようとするだろうか。「変える人が多そう」と想像するかもしれない。しかし予想に反してFrance2・France3を運営するFrance Télévisionsでは、視聴者は番組から離脱せず、むしろ同局に対する評価が向上したという。
気候危機や自然災害が手遅れになってから話題になることを防ぐには、今日、明日の天気と気候変動を結びつけて考えることが大切だ。これが、最も身近に地球の異変を感じ取ることができる重要な機会の一つなのだから。
【参照サイト】Climate scientists join familiar weather anchors on French TV’s nightly forecasts|Trend Watching
【参照サイト】Climate scientists answer viewers’ questions on France’s ratings-topping weather forecast
【参照サイト】【気候危機に関する気象予報士・気象キャスター共同声明】を本日公開!!「日常的な気象と気候変動を関連づけた発信」で命と未来を繋ぐ。
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