英・ヒースロー空港に「自然管制塔」誕生。バードストライクを防ぎ、生態系を守る

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世界有数のハブ空港として知られるロンドン・ヒースロー空港。その敷地内に、近年ちょっと変わった管制塔が登場した。

監視対象は、鳥やキツネ、昆虫、希少な植物などの野生生物。空港を取り巻く生態系を見守る「自然管制塔」だ。いまヒースロー空港は、航空の安全性を確保しながら、自然環境との調和を目指そうとしている。

背景にあるのは、「空港と自然は共存できるのか」という根本的な問い。滑走路付近に生息する鳥の群れは、航空機との衝突(バードストライク)を引き起こしかねない。一方、空港敷地内には絶滅危惧種を含む多種多様な野生生物が生息している。ヒースロー空港では、こうした矛盾を抱える環境において、野生動物を守りつつ空港の機能も維持する工夫が求められてきた。

その中核を担うのが、生物多様性チームによる自然監視活動だ。モニタリング機器や現地調査を用いて鳥や植物の分布を常時把握し、必要に応じて航空ルートの調整や生息地の保全措置を講じている。

象徴的な「自然管制塔」は、航空管制塔を模した外観が特徴で、空港内の13ヶ所にある自然保護区のひとつに設置されている。

一般公開もされており、無料のバードウォッチングや専門家によるガイドツアーが実施されている。訪れた人は、カワセミやフクロウなど79種の野鳥や数百種類のチョウを間近に観察できるという(※1)

ヒースロー空港では、敷地全体の約10%、およそ170万平方メートル(東京ドーム約36個分)が自然保全エリアとして管理されている。そこには淡水湖や草原、ヨシ原、森林など多彩な生態系が広がり、英国固有種のブラックポプラ、ヨーロッパウナギなど、地域に根差した4,000種以上の暮らしている(※2)

飛行機のライブ配信チャンネル・Big Jet TVの創設者であるジェリー・ダイヤー氏は、Heathrow Media Centreにて「ヒースロー空港では何千機もの飛行機が着陸するのを見てきましたが、次は空港内の自然豊かな場所に鳥たちが着陸するのを見るなんて!これはネクストレベルの飛行機スポッティングです。」とコメントしている。

「自然管制塔」はこれからも生き物たちの住処を守れるだろうか。飛行機と鳥を同じ空に見上げる光景が、今後さらに広がっていくかもしれない。

※1 ※2 Nature Traffic Control – Heathrow opens bird watching tower to launch Nature Positive Plan Heathrow Media Centre

【参照サイト】Heathrow’s Nature Traffic Control Tower Takes Flight
【参照サイト】Nature Traffic Control – Heathrow opens bird watching tower to launch Nature Positive Plan
【参照サイト】Birdwatchers’ control tower disguise at Heathrow
【参照サイト】Heathrow Airport disguises new ‘air traffic control tower’ for completely different use
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Edited by Megumi

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