社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、エコと速さを両立する風力輸送の貨物船や、道路や壁の壊れた部分をミニチュアアートに変えるアーティストなどを紹介した。
日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。
愛に溢れた世界のグッドニュース5選
01. いろとりどりの願いが、空を舞う。NY・タイムズスクエアで希望の年明け
新しい一年の幕開け。ニューヨーク・タイムズスクエアのカウントダウンでは、年越しの瞬間、空からたくさんの“希望”が舞い落ちた。
恒例となっているこちらの催しは、新年を迎える瞬間、人々の希望や夢を書き込んだ紙を、1トン以上の紙吹雪に加えて空から撒くというもの。参加方法はシンプルだ。12月のあいだ広場に設置されたウィッシング・ウォール(願いの壁)で願いを紙に直接記したり、WEBフォームに投稿したりするだけ。こうして、色とりどりの紙に書かれたメッセージが、歓喜の声とともに街中へと降り注いだのだ。
誰かの切実な祈りや、ささやかな幸せへの願いが、空間を埋め尽くす。小さな願いたちのきらめきが空を舞う美しい光景は、きっと新しい一年を歩む力になってくれるはずだ。
02. 無理なく「ほどほど」に。徐々に禁酒へ導くビール
年の始めの1月、飲酒を控えてお酒との付き合い方を見直す──イギリス発のドライ・ジャニュアリーという健康習慣が広がっている。しかし、「飲みすぎないぞ」と思っていても、ついついグラスに手が伸びてしまう人もいるだろう。意志の力だけで自分を律するのは、案外むずかしい。それなら、プロダクトの側からそっと背中を押してもらうのはどうだろう。
「ホリデー・デトックス・パック」と呼ばれるビールの6本パック。これは、1本目はアルコール度数5%、そこから2本目、3本目……と飲み進めるごとに度数が1%ずつ下がり、最後の6本目は0%になるというビールパックだ。急に禁酒を強いるのではなく、ゆるやかにお酒との距離をおけるよう導いてくれるのである。
節度ある飲酒をデザインの力で支える。楽しさを損なわずに、私たちの生活をもっと健やかで、穏やかなものに変えてくれるアイデアだ。
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【参照サイト】From 5% to zero: the six-pack of beer that makes moderation feel doable│TrendWatching
03. 野菜の3Dインクで描く、栄養価の高いイラスト?
「野菜を食べてほしい」と願う大人たちの気持ちとは裏腹に、「食べたくない!」を貫く子どもたち。このすれ違いはきっと、世界中のいろんな家庭で繰り返されているのだろう。
米アーカンソー大学の研究チームは、こうした課題に対し、3Dプリンターを活用した新しいアプローチを試みている。研究では、ブロッコリーやニンジンなどの野菜をペースト状に加工した「バイオインク」を用い、子どもに親しみのあるキャラクターなどの形に成形。見た目の楽しさを加えることで、野菜に対する心理的な抵抗感を和らげ、自然に手を伸ばしてもらうことを目指している。
また、この技術の可能性は、子どもの偏食対策にとどまらない。食品ロスの削減や栄養価の調整、個々の健康状態や嗜好に応じた食事設計にも応用できるとされる。災害時や医療・介護の現場、さらには宇宙空間など、食に制約のある環境でも活用が期待されており、3Dプリント食品は、食のあり方を柔軟に問い直す技術として注目を集めている。
【参照サイト】3-D Printing: The Future of Food
04. 認知症の人に「自由な散歩」を。心の道しるべになるコンパス
いつもの道のはずなのに、急に行き先がわからなくなる。そんな瞬間は、認知症のある人にとって大きな不安につながってしまう。そうすると、一人で外に出ることが怖くなり、やがて「歩く自由」そのものを手放してしまうケースもある。
そんな不安にそっと寄り添うために生まれたのが、シンプルなコンパス型のデバイスだ。あらかじめ自宅などの目的地を設定しておけば、外出中は針が常に「帰る方向」を示してくれる。複雑な操作や地図は必要ない。向きを確かめるだけで、「ちゃんと帰れる」という安心感が小さな自信をもたらしてくれるのだ。
高度な機能を詰め込むのではなく、使う人の尊厳に寄り添い、必要最小限の助けを差し出す。そのささやかな仕組みは、認知症があっても自分の足で歩き、社会とつながり続けられるという希望を示している。
【参照サイト】“Dankzij Het Kompas ga ik iedere dag weer wandelen in het bos.”
05. 初めての「自閉症のバービー人形」が届けるメッセージ
おもちゃ箱の中の世界は、子どもたちが最初に出会う社会の縮図だ。そこに自分と似た存在がいることは、子どもにとってどれほど心強いだろうか。
米国の玩具メーカー・マテル社から、初めて自閉症を反映したバービーが発売された。このバービーの開発には、自閉症当事者団体が協力しており、音に敏感な特性に配慮したノイズキャンセリング・ヘッドホンや、気持ちを落ち着かせるためのフィジェットトイなどを身につけるなど、当事者の体験やニーズを丁寧に反映しているのが特徴だ。
多様なスペクトラムである自閉症のすべてを、このバービーが表せるわけではない。それでも彼女の存在は、自閉症の子どもたちに「あなたはあなたのままでいい」と伝え、周囲の子どもたちには多様なあり方が存在することを教えてくれる。ヘッドホンをつけたバービーがおもちゃコーナーに当たり前に並ぶとき、私たちの社会の「当たり前」が、またひとつアップデートされるのだろう。


























