セルフィーで身分証明。AIを活用して本人確認を楽にするイギリスのスタートアップ「Onfido」

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2018年度に日本国内で発生した架空請求や融資詐欺などの特殊詐欺の被害額は360億円以上となっている。このような犯罪では、偽造の身分証を使ったり身分を偽って開設した口座を使用したりといった、身分証明の偽装が行われているケースも珍しくない。身分証明システムの市場は2022年には全世界で2兆円以上になると推定されており、ニーズの高さが伺える。企業にとって、自社サービスを悪用されないために取引先やサービス提供相手の身分を確認する作業は、安全面でもコスト面でも大きな課題だ。

身分証明の正確性の確保とコスト減少のニーズが高まる中、イギリスのスタートアップ「Onfido」が開発したのは、セルフィーで身分証明ができるシステムだ。同社はAIを活用して、企業の採用活動で使える身分証明用のSaaSを提供している。労務管理の中で本システムは、一時的に雇用した人や業務委託者に対して使用されることを想定しているが、今後は金融やeコマース分野への拡大を見込んでいる。

このサービスを使うために用意するものは、カメラつき端末とパスポートや運転免許証などの公的な身分証明書のみ。身分証明を行うユーザーは、身分証明書の証明写真をシステムに送信した後に、自分の表情の写真や動画を撮影する。その際には、「まばたきをしてください」「指定の数字を読み上げてください」「笑顔を作ってください」といった指示が与えられるのだ。

このように、ユーザーのさまざまな画像データを取得したうえで 表情認識や生体認証技術による本人確認や、犯罪歴や運転規則違反などの既存データを加味して、身分証明が信頼できるかどうかを自動的に判定する。同社によると、判定後の最終的な確認は人間が行う必要があるとしながらも、身分証明業務の大半を自動化できること、また顧客確認の効率化やマネーロンダリングといった犯罪の防止に貢献できるとしている。

近年、中国で監視カメラを用いた信用度判定が行われたり、日本でも企業の反社会組織への対応が厳格に求められたりするなど、個人の身分証明は一層求められる傾向にある。個人を特定する技術の発展が進むにつれてプライバシー保護の議論も活発化しており、利便性と安全性の両面を考慮したサービスの出現や、法規制を含む社会的な議論は今後も求められるだろう。

【参照サイト】警視庁・報道発表資料
【参照サイト】Onfido raises $50 million for AI-powered identity verification
【参照サイト】Onfido

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