多くの女性にとって、結婚式やパーティーなどの予定が入ったときの一番の悩みは、何を着ていくかだ。男性であれば衣装のほとんどがシンプルなスーツのため、小物のみで変化を出せるが、女性の場合はそうはいかない。また、会社のパーティーや結婚式などであれば、その機会は幾度も訪れるうえに出席者も重なることが多いため、何度も同じ服を着ることは避けたい。
自身のイメージをも左右する華やかな場では、それなりの質やデザインのある洋服を身につけたいと考えるのが女心というもの。そして、そうやって購入した洋服はその後着る機会を失い、クローゼットの奥に眠ってしまう。
このような無駄をなくし、高品質な洋服を環境に優しい形で楽しもうと生まれたのがトロントのBOROだ。一度のイベントのために何万円もする洋服の購入を検討している人と、数回しか着なかった高品質の洋服をクローゼットで眠らせている人をつなげる洋服のシェアリングエコノミーサービスがコンセプトである。
ドレスのレンタルサービス自体は既に世界中で数多く存在しているものの、BOROがそれらのレンタルドレスサービスと一線を画している点は、「企業が洋服の在庫を貸し出す」のではなく「個人同士の貸し借り」を仲介するというところだ。まさに洋服版のAirbnbといったところだ。
BOROは、シェアリングエコノミーの理念を軸にオンラインストアを開発。高級ドレスやバッグ、ジャケットを30カナダドル〜という手頃な価格で最大10日間借りることができるシステムを構築した。そしてレンタルする側は、クローゼットにしまいこんでいる洋服を貸し出すことにより、レンタル価格の50%を得ることができるという仕組みになっている。差し引かれる手数料は、衣類をレンタルする店舗の維持や洋服のメンテナンス、ドライクリーニング、配達などに利用される。
出品者の作業は、レンタルしたい洋服やバッグ、アクセサリーなどの写真と説明文の提出だけだ。その後、BOROの査定を通過した商品のみがオンラインストアにアップロードされる。
個人同士で洋服を貸し借りする際の一番の問題はサイズだが、BOROではサイズが合わなかった場合は100%の保証を提供しており、払い戻しや他の商品と交換をすることができる。
BOROは、せっかく買った高級な洋服を中古として売り、安価な価格で手放すよりも、もう一度着たいと思った時に着ることができ、なおかつその洋服を貸出すことにより収益を得ることもできる資産としての扱いを提案している。
そして、そうやって洋服を大切に利用することにより、環境汚染の大きな原因ともなっている「ファストファッションの大量消費」という環境負担の高い行為を食い止めることにも役立てたいというのが同社の考えだ。
Own moments, not things. (モノではなく時を所有する)という考えのもとBoroを立ち上げたクンダリ氏と共同設立者のナタリー氏は、シェアリングエコノミーを通してファッションの再定義を図りたいと考えている。車といえばUber、住宅といえばAirbnb、映画といえばNetflix、というように、Boroがファッションのカテゴリーで認知され、モノを所有するのではなく、その楽しい瞬間と経験を所有するということにBoroを通して人々が楽しむことができることを願っているのだ。
既にあるものを最大限に利用し、それを資産として活用するというシェアリングエコノミーは、その合理性や経済性が評価され世界中で急速に増えている。人々の暮らしをより豊かにし、限りある資源を守るために最適な方法がこのBoroのようなサービスにより今後ファッションの世界にも広がることを期待したい。