世界では、毎年生産された食料の約3分の1が捨てられている。アメリカのスーパーマーケットでは期限切れの食料を廃棄することで1店舗につき1日平均2300米ドルを無駄にしている。これは年間で見れば食品業界全体で570億米ドルもの損失だ。
一方で、リアルタイムで在庫を管理する能力に欠けるスーパーマーケットは品切れ商品や空の棚、逆に過剰在庫のために470億米ドルも無駄にしており、「食料廃棄」と「在庫管理の非効率性」は小売業界が抱える大きな二つの課題となっている。
この問題を同時に解決するべく、イスラエルとニューヨークに拠点を置くWastelessが開発したのが、消費期限によってスーパーの食料品価格をリアルタイムで更新するテクノロジーだ。消費者、小売業者、そして地球環境の三者がwin-win-winとなる非常に魅力的な仕組みとなっている。
Wastelessは、食料品店がインターネットと機械学習技術を活用し、商品の消費期限に合わせてリアルタイムで値段を変えられる世界初のトラッキングシステムを開発した。各々の商品に独自のIDコードをつけるため、消費期限やバッチID、位置のような商品情報を絶えず追跡し、品物毎につけられたRFIDと呼ばれる高度で動的なICタグと電子棚札に反映する。価格を計算する際には、動的な価格エンジンによって需要、供給、位置、休日、時間といった43もの要素が考慮される。消費者は、期限が2〜3週間の商品を通常価格で、または1〜3日の商品をより手頃な価格で購入するかを選ぶことができる。
この仕組みにより、スーパーマーケットはより多くの品物を売り、無駄を少なくできる。Wastelessは商品の在庫を継続的に監視し、もし商品が売れずに棚に長期間置かれた状態であれば、自動的に値下げをしてくれる。逆に在庫が手薄になると店側は通知を受けられるため、よく売れる商品の在庫切れを防ぐことができる。食料廃棄ロスの削減と同時に品切れといった機会損失も未然に防ぎ、売上向上とコスト削減を同時に実現する機会を作り出しているのだ。
Wastelessの創業者で最高執行責任者であるBiron氏は次のように述べている。「動的な価格設定は、航空券やホテルの予約にも日々使われ、食品業界がそれと異なる理由なんてない。消費者にとっては価格が安くなり、スーパーマーケット側はさらに収益を増やすことができ、すべての関係者にとって素晴らしいことだ。もちろん、世界の食料廃棄全体の40%を占める小売業界で、食料廃棄をかなり減らし我々の地球を守ることにもなる。」
この世に無駄な食料はないのだが、現代これだけ食料廃棄が多いのは、本来必要なところに行き渡っていないだけである。Wastelessのテクノロジーで、効率の良い食料分配が実現されれば、人間も環境もよりハッピーになるだろう。
【参照サイト】Wasteless
【参照サイト】国連食糧農業機関(FAO)
(※画像提供:Wasteless Press Kit)