私たちが普段使用する家具には、木材やプラスチック、金属など様々な資源が使われている。そしてそれらの多くがリサイクルされることがないまま廃棄されているのが現状だ。しかし、世界人口の増加に伴って家具の需要も高まり続けるなか、このような大量生産・大量消費型のビジネスモデルには限界が見えつつある。
この家具業界が抱える課題を解決するべく、廃棄されるゴミを活用した完全循環型のビジネスモデルで家具の世界に変革を起こそうとしているスタートアップ企業がロンドンにある。
ナイキの前グローバルマネージャーで現在は英国リーバイスのマーケティング部長を務めるHall氏らが設立した「Pentatonic」は、スマートフォンなどの電子機器や空き缶、廃棄された衣料品、タバコの吸い殻など、廃棄物を原材料として家具づくりに取り組んでいる持続可能なホームウェアブランドだ。
既にかなりの注目を浴びており、初期の資金調達では470万ユーロを獲得している。今年のLondon Design Festivalで初めて家具のコレクションを披露する予定だ。
Pentatonicが提供する家具は完全にリサイクル可能で、買い取り保証も付いている。顧客は使用済みの家具やパーツを買い取ってもらうことができ、Pentatonicはそれらの家具を回収し、再製品化して店頭で売るという完全循環型のビジネスモデルを確立している。
また、同社の製品は道具なしで組み立て可能で、複雑な組立加工や化学薬品を含む接着剤なども使用する必要がなく、生産・組み立て過程における環境負荷も最小限に抑えられている。そして製品はモジュール化されているため家具をパーツごとに交換することも可能だ。椅子のシートを変えたければシートだけ交換が可能で、椅子のパーツを解体して机に組み変えることもできる。
さらに、ウェブサイト上では製品ごとに節約された廃棄物の量や経済的価値、どんな廃棄物から作られているかが表示されているため、その製品がもたらしている影響も一目で分かるようになっている。
ゴミの山を宝箱に変えるテクノロジーとイノベーションを併せ持つPentatonic。同社の持続可能でスタイリッシュな家具で生活しながら、無計画で行き過ぎた消費文化から循環型経済モデルへと舵を切る時代が、もうそこまで来ている。
【参照サイト】Pentatonic