ニュースに背景や用語説明などの「文脈」を埋め込むツール、オランダで誕生

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2016年のアメリカ大統領選から世界的に注目されるようになったフェイクニュース。話題性やアクセス数のみを重視し、人々を煽るだけ煽って対立させる報道。世界規模のパンデミックが起きている今、ますます建設的な報道(コンストラクティブ・ニュース)が求められている。

建設的な報道のために大切な要素の一つが、「文脈」を提供することだ。事件当日に起こったことや、有名政治家の発言といった物事の一つの面だけを切り取るのではなく、そこに至るまでのさまざまな側面を見て、現状の複雑さを正確に伝えることである。しかし発信側としてはネットニュースの限られた文字数では伝えきれないこともあり、読者側としても、あまり記事が長かったり知らない言葉がたくさん出てきたりすると、「もういいや」と読むのをやめてしまうこともある。

そんな中、正確で建設的なニュースの発信を助けるツールが2018年にオランダで誕生した。「Newschain(ニュースチェーン)」と呼ばれるこのツールでは、ネットニュースの中に用語説明や背景などの文脈が書かれたブロックを埋め込むことできる。これを開発したのは、自身もジャーナリストとして働くオランダ出身のJolien van de Griendt氏と、Pepijn Nagtzaam氏の2人だ。

newschain

このように、ニュースの理解度を深めるための専門用語の説明などが書かれたテキストブロックを埋め込み、読みたい人だけが開いて読める仕様にすることで、記事を長文にしたり、用語の説明で話が脱線したりしなくてすむ。一度完成したブロックは他のニュースに使いまわすこともできるのが画期的だ。

また、導入するサイトではそれぞれのブロックの開封数や読む時間を把握することが可能なため、読者にとっての「つまづきポイント」を知り、わかりやすく正確な伝え方を研究するのにも役立つ。

たとえばオランダの日刊紙De Gelderlanderに掲載されている「学校が授業中のNetflixへのアクセスを禁止した」ニュースでは、オランダ国内の他の学校では携帯の持ち込みに関してどのような取り組みが行われているのか、という文脈を提供している。

日刊紙De Gelderlander

他にも、日刊紙のAlgemeen Dagbladや、アイントホーフェンに拠点を置くEindhovens Dagbladなど、オランダ国内のメジャーな新聞社もこのNewschainを導入している。

ちょっとしたツールの導入で、背景などの文脈を網羅した建設的な報道ができる。読む側のリテラシーも上がる。これぞグッドなジャーナリズムの好例ではないか。

【参照サイト】Newschain

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