イギリスで深刻化するホームレス問題。現在路上生活を送る人は8,000人にのぼり、ホステルなどの仮住まいを転々とする「隠れホームレス」は2万人を越えると言われている。
そんなイギリスの都市問題を改善するため立ち上がったのが、クラウドファンディングプラットフォーム「Beam」だ。このサイトで集められたお金は、ロンドンに住むホームレスの職業訓練および資格取得に使われる。目的は、彼らが安定した仕事や持ち家を確保した第2の人生のスタートを支援することだ。
どんな人もそれぞれ悩みや問題を抱えていて、時にはスタートをきるのが難しいこともある。しかしお互いが助けあうことで、明るい未来を掴めるはずだ。そんな思いのもと作られたこのプラットフォームの特徴は、なんと言っても距離の近さである。
サポート対象として登録されているホームレスの人々は「メンバー」と呼ばれ、それぞれが個人ページを持っている。名前と顔写真はもちろん、彼らのプロフィール―家族や子ども時代のこと、どういう経緯でホームレスとなったのか、将来の計画など―が詳細に、彼らの言葉でつづられている。趣味やひみつの特技の紹介まであり、まるで友達のフェイスブックを見ているような気持ちにさせてくれるのだ。
プラットフォーム利用者は、応援したいメンバーを選ぶか全員に寄付できる。時には応援コメントを投稿し、メンバーは動画やメッセージつきの写真などで、それに応える。メンバーの就職状況や生活環境の変化などに合わせて、個人ページは随時更新される。みんなでメンバーの新たな歩みをリアルタイムで見守り、応援できる仕組みなのだ。
各メンバーの将来計画は、目標金額やその内訳、職業訓練の日程にいたるまで細かく記されていて、その達成状況はすべてWeb上に公開されている。計画の作成をはじめ、メンバーの生活全般をサポートする人の多くは、もともとBeamの「メンバー」だったというから驚きだ。「たくさんの人に応援してもらった後には、自分が応援する側に回りたい」そう思う人が大多数だという。
Beamはロンドン市長の全面的サポートを受け、BBCを始めとする大手メディアに取り上げられてもいるため、今やイギリスの人々の注目を集めている。
IDEAS FOR GOODでは、これまでにもホームレスの人々の支援を目的としたサービスを紹介してきた。ニューヨークのホームレスを、ブロックチェーン技術を用いて支援する「Fummi」などがいい例だ。しかしこういったサービスが広く多くの人に向けたサービスであることに対し、本稿で紹介したBeamは「個人の性質に着目し、距離を感じさせない」画期的なプラットフォームである。
困っている友達に手を差し伸べるような感覚で、地球のどこかで頑張っている誰かの背中を、そっと押すことができる。「支援する側」と「支援される側」の2者が存在するのではなく、双方向的な助け合いのコミュニティが世界中に広がっていく。そんな時代を私たちは生きているのだ。
【参照サイト】Beam