レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザやミケランジェロのダビデ像、ゴッホのひまわり。世界には多くの偉大な芸術作品がある。これらの名作は時代を、そして言葉や文化すらも超えて、さまざまなメッセージを残すものである。この記事を読んでいるあなたも、それらの作品のいくつかを美術館で実際に観たことや、少なくとも教科書で目にしたことがあるかもしれない。
しかし、そんな作品たちを目で見たことはあっても触れたことがある人は少ないのではないのだろうか?イタリアのアカデミア美術館で、ミケランジェロの作品やダビデ像を触れることなど考えられないだろう。
でも、もし触れることができるのならば、あなたは体験したいだろうか?さらに、この触れる体験により、目の不自由な人ともその感覚を共有できるとしたら・・・?
それを可能にするデバイスが、チェコで生まれた。プラハ国立美術館が開発したHaptic Feedback Glovesとバーチャルリアリティ(仮想現実)を組み合わせると、目の不自由な人が世界の偉大な作品たちを”触れて見る”ことができる。
現在、世の中には、生まれつき目の見えない人が3600万人、なんらかの視覚異常がある人が2億1700万人いると言われている。この数は、世界の人口を76億人とした場合、約35人に1人にあたる数だ。
レーザーを使用して作品の実物をスキャンし、その作品を3Dでバーチャル空間に作り出す。そして手袋には、振動装置が組み込まれており、手の圧力を感じる感覚器官を刺激することにより、使用者に触れているような感覚を伝えるシステムだ。
使用者は、バーチャル空間にある3Dの作品に触れることにより、その振動パターンを手に感じる。また、表面や形によって、振動パターンが変わることにより、その違いも使用者に伝わるようにできている。
五体満足に生まれ、五感で様々なものを感じることができるということは、とても幸せなことだ。しかし、目の不自由な人、耳が不自由な人は、わたしたちが見ているのと同じ景色を見ることはできず、鳥のさえずる音も聞こえないのだ。
ただ、こうした新しい技術により、いままで不可能だったことが可能になるのだ。すでに、目の不自由な水泳選手にどこでターンをすれば良いか伝える水泳帽や、触れて見る3D写真なども開発されてきている。
最近では、筑波大准教授である、落合陽一氏と日本フィルハーモニー交響楽団が、「耳で聴かない音楽会」というプロジェクトを進めている。これも振動を利用して、音を耳の聞こえない人に届けようというものだ。
こうした新しいテクノロジーとアイデアのおかげで、なんらかの障害を持つ人も持たない人も、今まで経験できなかったことを楽しめる未来が、すぐそこまで来ている。
【参照サイト】TOUCHING MASTERPIECES
【参照サイト】Haptic VR gloves allow the blind to experience art
【参照サイト】音楽を“身体”で聴いて楽しむ!「耳で聴かない音楽会」とは?
(※画像:TOUCHING MASTERPIECESより引用)