「電気自動車に電気を配達する」という、新しいサービスがドイツ・ベルリンに誕生し、話題を呼んでいる。
いま世界では、多くの国が気候変動や大気汚染の問題に取り組んでおり、電気自動車も普及拡大に向けて技術開発が着々と進められている。電気自動車の普及にあたっての大きな課題の1つは、充電スタンドの数を充実させることだ。家から充電スタンドまでの距離が遠かったり、充電スタンド間の距離が長いと、不便を感じて購入をためらってしまうこともあるだろう。
この不便さの改善に挑戦するのは、2017年に創業開始したばかりのスタートアップChargeryだ。いつでもどこでも、ベルリン内の電気自動車に電気を配達するサービスを開発した。
Chargeryのサービスシステムは簡単だ。スマートフォンアプリで充電する希望の場所と時間を指定すると、30分後にはスタッフがバッテリーを積んだ電動自転車で指定場所にやってきて、充電を開始するのである。
Chageryのキーワードは、”クリーンエネルギー”。充電ボックスに入っているバッテリーのエネルギー源も、もちろん再生可能エネルギーだ。充電ボックスはドイツ製で、安全性を重視した。また、第4世代移動通信システムである4Gデータ伝達機能を使って、充電状況を常に管理するなど機能性に優れている。
ボックスに入っている電池は、最新のリチウムイオン技術を使用している。個々の電池は小さく、衝撃や振動に耐えられる設計だ。現在のシステム総容量は、乗用車の航続距離160㎞に値する24 kWhで、充電時間は3時間から4時間だ。近い将来、充電機能を50kWまで上げることを予定しており、充電時間は半分に短縮されるという。
現在は、提携企業車のみにサービスを提供しているが、2019年からは一般の顧客向けの受付も開始するようだ。これから、職場の近くに電気自動車を停めて、仕事中にChargeryを利用すれば帰宅時には充電が満タンになっていたり、外出の途中で充電スポットが無くてもバッテリーの心配をしなくて済むようになったりする。
場所を選ばすに時間を有効活用できる、嬉しいサービスになると期待大だ。今後、ベルリン以外の街でも事業を展開していくという。
このシンプルで便利なサービスにより、Chargeryはこれまでに多くの賞を受賞してきた。現在、世界的に最も重要な環境賞とされるGreenTec Awardsの2018年トップ10にノミネートされている。
充電スタンドまでの距離の問題を解決してくれる、新しい発想のサービス。行き先の心配をすることなく、さらに充電中も時間が自由に使えるようになるため、生活の中にゆとりと快適さが生まれる。電気自動車の普及に挑むChargeryのこれからに注目したい。
【参照サイト】Chargery
(※画像提供:Chargery)
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