ハワイでサンゴ礁に有害な日焼け止めを禁止。史上初の法案を成立へ

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日差しが強さを増し、本格的な夏が近づいてきたことを感じさせる今日この頃。夏の行楽地といえば、芸能人のリゾート地としても有名なハワイだ。太平洋に浮かぶ島々は、透き通った海と、色とりどりの魚、そして眩いほどのサンゴ礁に囲まれている。しかし、この豊かな自然環境づくりの一端を担うサンゴ礁が、危機に瀕しているという。

米国のハワイ州は5月1日、同国で初めてサンゴ礁に有害とされる日焼け止めの販売・流通を禁止する法案を可決した。知事の署名が得られれば、2021年1月に施行される予定だ。

科学者たちによると、オキシベンゾンやオクティノクセイト等の科学物質を含む日焼け止めを海で使用することが、サンゴ礁の死滅や白化を招くという。毎年、推定14,000トンの日焼け止めが海洋に堆積し、サンゴ礁が有名なハワイだけでなく、カリブ海地域でも大きな被害とされる。

2015年には、非営利団体Haereticus Environmental Laboratoryの調査により、毎日平均2,600人のスイマーを集めるオアフ島のなかでもシュノーケリングが盛んなハナウマ湾のサンゴ礁に、毎日平均で約186kgの日焼け止めが沈着することが判明した。

毎年2,000〜5,000人の海水浴客が訪れるセント・ジョン島のトランクベイでも調査が行われ、毎年2700kg以上の日焼け止めがサンゴ礁に堆積していたことがわかり、カリブ海など他の地域でも日焼け止めが悪影響を及ぼしていることが浮き彫りとなった。

サンゴ礁は、日焼け止め以外にも、海洋の温暖化、下水汚泥、農業排水などの影響を受けている。他の要因と比較すると、日焼け止めなどの化学物質の流出は、比較的コントロールしやすいのだ。

Haereticus Environmental LaboratoryのエグゼクティブディレクターCraig Downs氏は、「ハワイのサンゴ礁は、過去20年で徐々に死滅しており、そのスパイラルは、エルニーニョ現象に起因する大量白化により加速しています。地元の看護師、医師、リゾート関係者、航空関係者など、皆がこの立法を願っているのです。」と法案成立を支持。

一方、すでに日焼け止めを販売するメーカーからは、問題と指摘される化学物質はFDA(アメリカ食品医薬品局)の認証を受けており、これは皮膚がん予防に不可欠だとして、反対する声もあがっているようだ。現地では、環境にやさしい日焼け止めを開発するスタートアップの動きも出てきている。

ハワイ州は、アメリカ合衆国に併合される前は「ハワイ王国」という太平洋の独立国家だった。世界の列強が太平洋に進出するなか、フロンティアを求めたアメリカは、ハワイへの影響を強めていったという。

素朴な生活を送っていたハワイの住民側は、西洋文明を受け入れ、より豊かになる道を選んだ。世界的な近代化の流れに乗り、ハワイは年間800万人もの人が訪れる観光地になったのだ。そしていま、大切な観光資源でもある美しいサンゴ礁をこれ以上見殺しにできないというのは、現地住民のなかで共通した意見だろう。

法案が施行されることになれば、海水浴客には少々、不便を強いるかもしれない。この取り組みが海洋汚染の根本的な解決につながるかどうかは引き続き検証が必要だが、手の届きやすい化学物質の流出を防ぐという点においては、現地の人の本気度が伺える法案である。

【参照サイト】Hawaii Passes Bill Banning Sunscreen That Can Harm Coral Reefs
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