「慣れ親しんだスイーツにも疑問を持って」神奈川のチョコレート専門店が目指す、フェアな地産地消ビジネス

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冷たい飲み物が美味しく感じられる季節。鎌倉で、ひんやりとした“エシカル”ドリンク「ショコラッペ・カラマンダリン」に出会った。

濃厚なビターチョコレートに濃い甘みが特徴の柑橘類カラマンダリンの果汁を合わせたフロート。飲んでみると、濃いオレンジを思わせるカラマンダリンの果汁がカカオの美味しさをひきたて、何とも爽やかだ。まさに初夏にぴったりなスイーツドリンクである。

「VANILLABEANS(バニラビーンズ)」

Image via Vallila beans

ドリンクを提供するのは、神奈川県内に展開するチョコレート専門店「VANILLA BEANS(バニラビーンズ)」。バニラビーンズを運営するチョコレートデザイン株式会社は「チョコレートで世界を幸せに」をスローガンとして掲げ、グローバルとローカルの両方の視点を持った「グローカル」な商品づくりをスタートさせた。冒頭で紹介した商品は、バニラビーンズみなとみらい本店、川崎店、鎌倉店で5月下旬から提供されている。

ではどこがグローカルなのか。このドリンクに使用するチョコレートの原料となるカカオは、100% 国際フェアトレード認証を受けたもの、カラマンダリンは必ず神奈川県産のものを使っている。国境を越えた生産者の影響まで考えたフェアトレードの商品であり、同時に地産地消なドリンクというわけだ。

このようなコンセプトを持つ商品の背景には、どのような想いがあったのか。チョコレートデザイン社の広報担当、渡辺泉季さんにお話を伺った。

「フェアトレード×地産地消」のスイーツができるまで

バニラビーンズが国際フェアトレード認証チョコレートを使いはじめたのは、創業から7年経った2007年からだ。2019年2月には、累計使用量が400トンを超え、大手メーカーのフェアトレードチョコレートの使用量に匹敵するほどになったという。

積極的にフェアトレードカカオを取り入れてきた背景には、設立者であり、パティシエでもある八木克尚社長の想いがある。カカオの主要生産国であるガーナやコートジボワールでは、低賃金での強制労働や児童労働といった人権に関わる社会問題が深刻である。こうした現状を知った八木社長は、自社で使用するチョコレートで世界をよくできないかと考え、フェアトレードカカオの使用をはじめたという。

カカオ農家

また、2018年からは「地産地消」にも取り組みはじめた。横浜生まれ、横浜育ちの八木社長は、地元である神奈川に貢献したい、と考えたのだ。地元の果物を使って持続可能なビジネスを行うため、神奈川県内で仕入先となる生産者を探すことに。そのなかで出会ったのが、大正時代からみかん栽培を営む、神奈川県小田原市の八木下農園だった(※1)

八木下農園では、農薬の使用を抑え、魚粕主体の有機肥料を使用するなど環境に配慮した栽培方法でさまざまな柑橘類を栽培している。そんな八木下農園の代表の方に、八木社長が「地元神奈川を盛り上げたい」と伝えたところ意気投合。また、チョコレートとの相性を考えた柑橘類を提案してくれるなど、おいしい食品を生み出すことに高い関心を持っていたことから提携を決めたという。

生産上の課題とは?

生の果物をスイーツに使うのは、簡単ではなかった。果物なので収穫時期はどうしても自然まかせな側面があり、採れる時は一度にたくさん採れる。そうなると加工作業に手間がかかるが、生ものなので早く加工しないと鮮度が落ちてしまう。保管をどうするか、輸送や加工体制をどうするかなどクリアしなくてはいけない課題がいくつもあった。しかし、収穫時期や量について八木下農園とこまめに情報交換をし、こうした課題を乗り越えたという。

果物の収量が限られていることも、当初は課題の一つだと考えられていた。もともとオンライン販売からスタートしたブランドであり、旗艦店ができた当初は、数量限定でものを販売することに抵抗があったそうだが、店舗での実績を積んだいま、堂々と旬のものだけを数量限定で売っている。今回ご紹介した「カラマンダリン・ショコラッペ」もなくなり次第終了だそうだ。

果物には旬があり、収量が限られているのはごく自然なことだ。無理やり、同じものを常に手に入れられるようにすれば、長期的に食品を保存するための添加物を使う必要があり、食品廃棄物も増えるだろう。季節ごとのスイーツの味を楽しめることは、自分にとっても環境にとっても幸せなことではないか。

グローカルなチョコレートビジネスのこれから

バニラビーンズの「カラマンダリンショーコラ」

バニラビーンズの「カラマンダリンショーコラ」

現在、バニラビーンズは、カカオを直接仕入れ、自家焙煎してチョコレートを作る、ダイレクトトレードに挑戦しようとしている。これにより、流通コストを大幅にカットでき、今まで以上にカカオ農家とよい関係を築きながら正当な対価を支払うことができるようになるという。

こうなると、もっと生産地と顔の見える関係が築けるのではないか。昨今、スーパーでは「○○さんが育てたレタス」などと名前を明記し、トレーサビリティーを確保した野菜が増えた。チョコレートも「ガーナの○○さんが育てたカカオでつくったチョコ」と言えるほど生産者との距離が近くなれば、もっと多くの人が生産者の置かれている状況に関心を寄せるきっかけになるのではないだろうか。

最後に、IDEAS FOR GOOD読者に対し、渡辺さんから「慣れ親しんだチョコレートに少しでも疑問を持って欲しい。みなさんの質問にはスタッフが全力で答えます」とのメッセージをいただいた。

私たちが買うものが、どこでどうつくられているのか。「知る」ことはエシカルなライフスタイルへとシフトする重要な手がかりとなる。カラマンダリンの香り爽やかなショコラッペを楽しみながら、多くの人が、暮らしている地域やカカオを生産する人たちに関心を持つ機会となることを期待したい。

※1 「みかん本舗」というお店を開いている。
【参照サイト】フェアトレードチョコレート使用量 国内トップクラスの「バニラビーンズ」、累計400トンを突破。SDGsの取り組み強化で2020年までに500トン挑戦。