自然災害は日本だけではなく、世界中で増え続けている。内閣府によると世界で毎年約1億6千万人が被災し約10万人の命が奪われるとともに、約400億ドル以上の被害額が発生している。また2000年代は、1970年代に比べて災害発生件数と被災者数ともに約3倍に増加しているという。日本の総人口を越える被災者がいる事実に、驚いた人もいるだろう。ニュースで見る災害はもはや人ごとではない。
そして災害が増加すると同時に、災害がもたらす課題を解決しようと考える人も続々と現れている。今回紹介するのは、災害地域のシェルターや災害ボランティアの多目的ハブとして役立つとされている「Skyshelter.zip」だ。
この建物はポーランドのデザイナーDamian Granosik、Jakub Kulisa、PiotrPańczykによって設計され、eVolo Magazineの2018年の超高層ビルコンペティションで、525のプロジェクトとの競争を勝ち抜き、1位に選ばれたものである。
Skyshelter.zipの大きな特徴は、高層ビルのような高さにも関わらず、折り紙のようにコンパクトに畳めること。持ち運びに便利な大きさであるため、道路が使えないような緊急事態には、ヘリコプターなどで簡単に運搬できる。
またSkyshelter.zipは不安定な土壌であっても地面に固着し、ボタンを押して内部の大きなヘリウムバルーンを膨らませるだけで即座に建設可能だ。既存の仮設住宅は一戸当たり数百万円の建設コストや、維持、管理、撤去のコストがかかる。これは国にとっても大きな負担かつ課題だが、それもSkyshelter.zipで解決しうるだろう。
建物内で植物の栽培もでき、従来の太陽電池よりも安価なペロブスカイト太陽電池を塗布した材料を利用することで電力を作り出せるなど、さまざまな事態に対応できる建物だ。
このシェルターの建物が高く設定されていることには3つのメリットがある。第一に、遠くからでも目立つため、被災者を導くランドマークとして役に立つこと。第二に、従来の仮設住宅と比較して約1/30の小さな敷地面積でシェルターを用意することができること。第三に、雨水を集め、建物の高さをいかしたフィルターを通すことで浄水を生み出すことができること。従来の仮設住宅の常識を覆す高さであるが、ただ奇抜さを狙っているのではなく、非常に理にかなった建物だ。
物理的な損害ばかりが注目されがちな自然災害。しかし思い出が詰まった家や、大切な人を失う経験は被災者にとって厳しい現実として突きつけられ、心に傷を負う人も少なくない。心休まる場を迅速に提供するSkyshelter.zipは多くの被災者を助けることになるだろう。
【参照サイト】Skyshelter.zip: Foldable Skyscraper for Disaster Zones
【参照サイト】内閣府 – 世界の自然災害の状況
(※画像:eVoloより引用)