企業が事業を行う上で、利潤を追い求めるだけではなく、社会の健全な発展にも貢献すべきという考え方をCSR(企業の社会的責任)と呼ぶ。昨今CSRの重要性は高まりを見せており、業績にも大きく影響を及ぼすようになってきた。
ある調査によると、消費者の80%が、似たような価格と品質の商品を見たとき、世のためになることを支援しているブランドを選ぶという。また、ミレニアル世代では、社会貢献や環境問題に積極的に取り組むブランドの商品やサービスに、より多くのお金を支払うと答える人が55%(2014年)から66%(2015年)と、大幅に増えていることがわかっている。
一方で、そういった社会問題に取り組む非営利団体の多くは運営資金が限られており、資金不足を避けるため企業の支援を受けていることもあるのだが、資金調達の際の透明性の欠如や一部の背信的な行為により、信頼性の低下に苦心しているという。
そこでマレーシア発のスタートアップIncitementは、企業のCSR活動と非営利団体の取り組みの透明度をブロックチェーンで高め、そして企業・非営利団体・ボランティアスタッフの三者をつなぐプラットフォーム「Inpactor」を開発した。
非営利団体が自分たちの取り組むプロジェクトの詳細をアップロードし、企業側は数あるプロジェクトの内容を吟味する。そのなかで支援するプロジェクトを決め、両者で協議を行ってから、ブロックチェーン上のスマートコントラクトで契約が結ばれる。企業が資金を提供する際も、プラットフォームのトークンで支払いが行われる。
さらに、社会活動に関わりたいボランティアに向けたコンテンツを用意していることもInpactorの特徴だ。ボランティア募集情報の掲載はもちろん、非営利団体側がプロジェクトの報告書をアップロードすると、実際にプロジェクトに関わったボランティアスタッフがその内容を確認できる。これにより、ボランティアにもプロジェクトの管理がしやすくなったり、成果がすぐにシェアされたりする。
新時代の技術であるブロックチェーンは、価値(お金)の移動や、契約締結に優れた機能を有する。スマートコントラクトで簡単に契約手続きを行い、資金の移動も半永久的に記録が残るため、透明性が高まり、実に多くの雑多な手続きを省くことが可能になるのだ。
Inpactorは、企業・非営利団体・ボランティアをつなぎ、社会的影響を作り出すソーシャルネットワークといったところだ。
【参照サイト】Incitement