イギリスでは子どもの肥満問題が深刻だ。同国の政府外公共機関であるNHS Digitalが2017年から2018年にかけて行った調査によると、10~11歳の約5人に1人(20.1%)、4~5歳の約10人に1人(9.5%)が肥満という結果が出ている。特に10~11歳のほうでは、深刻な肥満と見なされた子どもが4.2%もいるという。
こうした現状に危機感を覚えたイギリス政府は、肥満の子どもの割合を2030年までに半分にするという目標に向け、食品に含まれるカロリーを2024年までに20%削減するよう食品業界に呼びかけている。さらには、レストランやスーパーで販売される食品にカロリーの上限を設けることも検討しているという。たとえばピザなら1枚928カロリーまで、パイなら695カロリーまで、といった具合だ。
日本でこの上限が設けられることになれば、今販売されている食品にどの程度の影響を与えるのだろうか。試しに宅配ピザチェーンのピザーラが公開しているカロリー情報を見てみると、マルゲリータのMサイズとLサイズはこの上限を超える計算になる。英国公衆衛生庁(PHE)のAlison Tedstone博士は「ピザの肉やチーズを減らしたり、より小さいサイズで提供するなどの判断があり得るでしょう」と語る。
政府が規制するまでしなくても消費者が自分自身でカロリーの低い、健康的な食品を選べばいいのではないかという意見もあるだろう。だがこうした見方はTedstone博士からすると楽観的に映るようだ。「健康に良い選択肢がメニューにあるだけでは、国民の習慣は変わりません。一般的な選択肢のカロリーを低くする必要があるのです。ピザの一般的な選択肢といえばマルゲリータやペパロニピザです。ですから、これらの食品をより健康的なものにしなければなりません」と同氏は説明する。
NHS Digitalの調査によると、肥満の子どもの割合は地域によって大きな差が見られた。4~5歳の場合、キングストン・アポン・テムズの4.9%が最も低く、ノーズリーの14.4%が最も高かった。10~11歳ではリッチモンド・アポン・テムズの11.4%が最も低く、バーキング・アンド・ダゲナムの29.7%が最も高かった。貧困と肥満には強い相関があることも指摘されており、最も困窮した地域は最も豊かな地域と比べて、肥満の子どもが2倍以上いるという。
住む場所や経済状況が子どもの健康を左右している現状をみて、イギリス政府は全国一律のカロリー規制を設けようとしているのかもしれない。規制があれば、個々の環境に関係なく健康的な食べ物を口にできるからだ。この政策についてイギリス政府は、マクドナルドやケンタッキーといった企業と話し合いをしているという。さて、日本ではこの政策はどう思われるだろうか。
【参照サイト】Pizzas must shrink or lose their toppings under Government anti-obesity plan