寝ないことが民主主義を妨げる?知られざる「睡眠格差」とは

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2022年1月に、コロナ禍と睡眠の関係性についての興味深い研究が英国で発表された。同研究によると、コロナ禍の影響で睡眠に何らかの悪影響を受けた人々は、黒人やアジア人、女性、貧困層に多く、パンデミックは人々の「睡眠の格差」を拡大させた懸念があるという。

「睡眠の格差」という言葉に、あまりピンとこない人も多いかもしれない。しかし睡眠の格差は、人々の生活の質や、政治への参加度合いにも大きな影響を及ぼしているのだ。

睡眠不足や睡眠の質の低下が心身の健康に悪影響を及ぼすことは、多くの人にとって自明の事実だろう。しかし、睡眠不足によって慢性的な疲労状態にある人たちは投票率や抗議行動をする率が低い傾向にあるという事実は、あまり知られていない。

また、シフト労働や夜間勤務を行う人々は、眠る時間帯が不規則になりやすく、それゆえに一般的なタイムスケジュールで働く人々と比べると、日中の行動が制限されてしまう。一方、公的サービスを含む現代のサービスの多くは日中に提供されるため、そうした不規則なリズムで生活せざるを得ない人々は、不利益を被りやすいのだ。政治参加の機会も、その一つだと言えるだろう。

マジョリティとは異なる時間帯に睡眠を取らなくてはならない「睡眠の非同期化」の傾向は、発展途上国でも顕著だ。コールセンターなどのサービスが東ヨーロッパやアジアにアウトソーシングされることで、西欧諸国のタイムゾーンで生活することを余儀なくされる労働者のグループが誕生したからである。コロナによって仕事のオンライン化が加速したことにより、この傾向は更に強まっているという。

こうした睡眠の格差は、まだ問題としての認知度が低いことに加え、睡眠格差の被害者たちが、格差によって政治への参加を妨げられていることにより、改善されづらい構造にある。当事者である彼らが政治的行動を取らなければ、睡眠を害する労働に対する公正な補償など、格差是正のための政策が実現せず、その結果、更に格差が拡大してしまうのだ。

こうした状況を踏まえ、EUでは、「つながらない権利」など、睡眠の格差是正のための法案が提案されているという。同法案は、従業員が仕事にまつわる連絡に応答しなくていい時間帯を設定し、休息の時間を確保することを定めるものだ。

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睡眠格差の被害者の犠牲のうえに成り立つシステムに、被害を受けていない人たちがフリーライドしているとも言える現在の状況は、すみやかに改善されるべきだろう。夜間でも公的サービスを受けられるようにする仕組みづくりや、自国と異なるタイムゾーンで働かなくてもいいよう、経済活動を再ローカライズするための規制など、睡眠格差の是正への新たな取り組みが求められている。

【参照サイト】Being underslept and out-of-sync is a political injustice
【参照サイト】Prospective longitudinal study of ‘Sleepless in Lockdown’
Edited by Kimika

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