これからの図書館の在り方を考えよう。文部科学省が2014年に紹介した「図書館実践事例集~人・まち・社会を育む情報拠点を目指して~」を見ると、全国各地の図書館がより一層の機能強化に向けて“本を貸し出す”だけではなく、さまざまなアクションを起こしていることがわかる。全体的な傾向として、図書館という場所がら、住民への情報提供や読書の輪を広げるといった使命感を持って取り組んでいるところが多いようだ。
一方海外には、さらに従来の枠組みから大きく外れたアクションを起こしている図書館がある。
今年8月、ニューヨーク市の公共図書館The New York Public Library(以下、NYPL)が、図書館と言えば本という基本的な役割を根本からくつがえす取り組みを発表した。それはなんとファッションアイテムを貸し出すというもの。ドレスアップに必要なネクタイ、ボウタイ、ブリーフケース、ハンドバッグを各1回、3週間まで無料で借りることができる。
これらのアイテムが役立つシーンはいろいろあるだろう。就職面接で爽やかな印象を与えたいとき、結婚式で洗練された装いをしたいとき、卒業パーティーで自分自身を魅力的に見せたいとき。図書館で借りることができるものは自己主張の強くないベーシックなデザインで、誰にでも似合いそうだ。希望する人には、ファッションの相談にのってくれる組織の情報も提供している。特別な一日のために、図書館で服の準備ができるとは斬新だ。
この取り組みは、NYPLのイノベーションプロジェクトの一環で行われている。これは、NYPLのスタッフが考えた社会問題を解決するアイデアを実現するための資金援助などを行うプロジェクトだ。プロジェクトの開始以来60以上ものアイデアが実現に至っており、変化する図書館へのニーズに対応できるだけでなく、スタッフの図書館への帰属意識を高めるのにも役立っているという。
図書館という立場から地域の人々の生活や仕事に役立つアイデアを出し続け、サービスの改革を進めるNYPL。従来の役割にとらわれないアイデアは、これまで図書館に関心がなかった人々に対しても、サービスを広げることができるだろう。さあ、ドレスアップする時間だ。タイを結び、スーツを着こなして、粋に振る舞ってみよう。
【参照サイト】Time to Dress Up: Introducing the NYPL Grow Up Work Fashion Library