国連開発計画(UNDP)のジェンダー不平等指数(GII)で、日本は妊産婦死亡率や教育水準の高さ等が評価され19位と他の先進国並みだ。しかし一方で、男女格差の物差しとなるもう一つの国際的指数、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数(GGI)では114位と大きく後退する。その理由が、経済活動における女性の地位の低さだ。
政府主導で女性支援を行ってはいるものの、現場である企業の実態を見ると万事順調とはいえない状態だ。企業に大きな影響を与えるものには、政府の方針はもちろん、投資家の存在がある。投資家たちの資金なしには、大企業の経営はうまく回らない。
そこに着目したのが、アメリカの非営利団体As You Sow。企業のジェンダーへの取り組み方について収集した4000社のデータを活用し、投資先の企業の男女同権の度合いをズバリ数値化するツール「Gender Equality Funds(男女同権資金)」を開発した。
資金を運用するミューチュアルファンド(米国のオープンエンド型の投資信託)名を入力すると、そのファンドが関連する企業の詳細データから、ジェンダースコアをはじき出す。同ツールによると、たとえば、「Vanguard (VTSAX)」は、スコアが芳しくなく、「Pax Elevate Global Women’s Leadership Fund (PXWIX)」は非常に優等生だ。
As You SowのCEOであるアンディ・ベハー氏は「このファンドは、会社の役員に女性がいない、同じ仕事に同等の給与を支払っていない、セクシャルハラスメント規定がない、出産・育児休暇がないといった、ジェンダーに関する取り組みの度合いが、実際にわかるようになります。これにより、男女同権に無責任な企業から資本が大幅に流出するでしょう。」と語る。
ミューチュアルファンドは従来、投資効果を最適・最大化するために複雑な構成になっており、投資の内容がどのようなものか、はっきりとはわからないものだった。As You Sowは男女同権に加えて、これから化石燃料、熱帯雨林破壊、タバコ、武器といった要素も取り込んだツールづくりを進めていく予定だ。
これまでも、目に見える範囲で化石燃料関連を回避し環境保全に貢献しようという動きはあった。しかし、実際に取り組みの度合いを数値化し、誰が見ても一目瞭然になれば、投資家離れを恐れる企業がこぞって競い合い、企業文化や倫理は向上するだろう。
ただ利潤を追い求めるだけの資金は暴走しかねない。倫理が伴った投資を行うことが肝要だ。新たな投資評価基準となりうるこのツールは、性別による人権侵害を是正する大きな力になるだろう。
【参照サイト】New Gender Lens Investing Tool Helps Drive Capital to Mutual Funds Supporting Gender Equality
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