ドローンが腎臓を運ぶ?ドナーと患者をつなぐ新しい臓器輸送手段

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臓器移植は一刻を争う大手術だ。ドナーから患者(レシピエント)に臓器をわたす際、長く時間がかかるほど臓器の機能低下につながりやすい。手術の成功確率を高めるには、臓器をできる限り早く安全に搬送する必要があり、なんと最近の実験でドローンがその役割を果たせることが示された。

ドローンで臓器を運ぶ実験を成功させたのは、アメリカにあるメリーランド大学の研究者たちだ。同大学で外科医を務めるJoseph Scalea氏が、臓器の搬送が遅れて患者に移植できないケースに何度も遭遇したことから、よりよいシステムを構築したいと考えたことがきっかけだった。無人機による臓器送達が実現可能かどうかを調べるために、航空宇宙工学科の研究者らもこのプロジェクトに参加した。

実験で使用したドローンは、民生用のドローン市場で世界シェアの7割を誇るDJI株式会社の「M600 Pro」だ。M600 Proは各ローターの下に直接モーターが並んでおり、臓器を乗せてもローターと臓器の距離が空くため、モーターの熱が臓器にあたりにくいという特徴を持つ。さらに研究チームは気圧、高度、臓器の位置情報などを測定するために、無線で動くバイオセンサーも設計した。

ドローン

Image via DJI

そしていよいよ、移植には使えない本物の腎臓がドローン空輸の実験用に使えるという連絡を受け、研究者たちはドローンを使った腎臓の空輸に乗り出した。結果、この腎臓は1時間以上に渡り14回の飛行を達成した。腎臓は最長で2,415m運ばれ、これは都心部の病院間で臓器を搬送する際の距離に近いという。実験中、腎臓の温度は2.5℃で安定しており、最速で時速67.6kmを出したことも確かめられた。

実験後の診断結果によると、ドローンで運んだ後の腎臓にダメージは見られなかったという。今回の実験は「輸送時間も輸送距離も短かったのでは」という他大学からの指摘もあるが、肝臓のドローン輸送の実現可能性を示したという点で非常に意義のある挑戦となった。

では今回の結果を受けて、実際に病院がドローンを使って臓器を搬送するようになるだろうか。Scalea氏は、それには越えなければならないハードルがあると言う。米連邦航空局は、操縦者が見通せる範囲内かつ地上から400ft(122m)以内で、ドローンを作動させなければならないという決まりを設けている。これでは臓器だけでなく、ドローンで医療用品を輸送するのにも障害となる。

Scalea氏は「こういったハードルも乗り越えてみせる」と意気込んでおり、今は他の研究チームや病院と共にドローン配送のプランを練っているという。「期待していてください」というScalea氏の言葉通り、医療の現場でドローンが大いに活躍することを待ち望む。

【参照サイト】Maryland Test Confirms Drones Can Safely Deliver Human Organs
(※画像:DJI株式会社より引用)