都市の廃水をクリーンエネルギーに変える、チリの「バイオファクトリー」プロジェクト

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南米チリの首都サンティアゴにある3つの廃水処理施設が、汚水をクリーンエネルギーに変換する「バイオファクトリー」に生まかわろうとしている。

このプロジェクトを立ち上げたのは、チリ最大の水道会社Aguas Andinas社だ。当社は主要株主であるSUEZ社と共同で、2017年から廃水と下水汚泥をクリーンエネルギーに変える取り組みを行っている。2022年までにゴミゼロ、エネルギー自給自足、カーボンニュートラルを目標としており、当プロジェクトは気候変動への取り組みに成功している団体を讃える「2018 UN Climate Action Award」を受賞した。

チリのバイオファクトリー

(c)Aguas Andinas/SUEZ.

水は大切な資源だ。 しかし人口増加や都市の巨大化、および経済発展により、廃水による汚染負荷が増大し、私たちの健康と環境に害を及ぼしている。

サンティアゴでは約15年前まで5%以下の廃水しか下水処理されておらず、未処理の水と汚泥は市内のマポチョ川に垂れ流されていた。この川は灌漑用水(かんがいようすい:農地に外部から人工的に供給するための水)や飲料水として利用されていたため、地域の農業地帯では肝炎やコレラなどの病気も蔓延していた。

そこでAguas Andinas社は、サーキュラーエコノミーモデルを使って、廃水処理プロセスからゴミや化石エネルギー、および汚染物質を取り除くことを試みた。仕組みは以下のとおりだ。

バイオファクトリーに都市の生活排水と産業廃水を送り、汚泥などから電気に変換できるバイオガスを抽出する。このエネルギーは主に下水処理場にそのまま供給されるが、エネルギー生産に余裕ができた場合は送電網に一部を戻すこともできる。汚泥はリサイクルされ、都市建設プロジェクトや農業用肥料として使用できる。

下水処理された水は自然環境に放出され、きれいな灌漑用水となる。その水で農作物が作られ、最終的に食品として都市に戻るのだ。

現在、サンティアゴでは廃水の100%がAguas Andinas社によって処理されている。そして、下水汚泥からのエネルギー回収により49GWhの電力、177GWhの天然ガス、および84GWhの熱エネルギーが生産され、13万7,000トンの下水汚泥が農地肥料として利用されている。

きれいな水が戻ってきたことで、マポチョ川周辺の生態系も回復してきているようだ。 Aguas Andinas社は生態調査を行い、川にナマズやシルバーサイドなどの魚が戻ってきたとことを確認した。病気の蔓延も最小限に抑えられている。

多くの電力を消費する廃水処理施設をすべてをカーボンニュートラルにすることで、温室効果ガス排出を大きく削減できると予想されている。同様のプロジェクトは、現在スペインでも進められているそう。

下水処理場の水と汚泥をクリーンエネルギーに変えることで、地域および地球環境に好影響をもたらすチリのバイオファクトリープロジェクト。一石二鳥以上の効果が見込まれる、このプロジェクトのこれからに期待したい。

【参照サイト】Winners of 2018 UN Climate Action Award Announced
【参照サイト】Santiago Biofactory | Chile
(※画像提供:United Nations Climate Change)

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