インドネシアの暮らしにイノベーションを。アリペイとシンガポール国立大学がビジネスコンテストを共催

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企業として利益よりも社会課題の解決を目指すソーシャルベンチャーは、先進国だけでなく新興国でも増えつつある。現在インドネシアで34万社以上のソーシャルベンチャーが存在し、2016年からの1年間でソーシャルベンチャーの従業者数が推計42%増加しているインドネシアはその一例だ。

このような盛り上がりを受けて、グローバル企業によるソーシャルイノベーションの促進も始まった。現在全世界で9億人のユーザーを抱える中国モバイル決済大手アリペイが、シンガポール国立大学と共同でインドネシアのソーシャルイノベーションのビジネスコンテストを開催している。

コンテストは2019年1月まで起業家の応募が受け付けられ、3月に10社のファイナリストの発表、4月16日には最終受賞者が決まる予定だ。デジタルテクノロジーを用いてインドネシアの人々の暮らしを豊かにすることがテーマとなっており、「低所得層が仕事や教育にアクセスできる機会」「社会的に不利を抱えている層が社会変化に適応する機会」のいずれかを提供するビジネスであることが求められる。

すでに100社以上の応募があり、3社が賞金最大400万円を獲得する。受賞企業には賞金だけでなく、アリペイとシンガポール国立大学による技術的支援も行われる予定だ。ファイナリスト10社は、農業、フィンテック、ヘルスケア、教育、健康の5分野に集中し、インドネシアの抱える社会課題を如実に反映する結果となった。それぞれの分野に集まったアイデアを見ていこう。

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農業

コンテストで最も注目されている分野である農業はインドネシアのGDPの15%を占める主要産業であるため、イノベーションによるインパクトが注目されている。発表されたアイデアを見ていくと、「漁業従事者のための直売プラットフォーム」「生産物のトレーサビリティを改善するためのプラットフォーム」など、農業従事者の情報アクセスを改善し、収益増をサポートするアイデアが見られた。

また、中小規模農家の収入を増やすための生産性向上も課題である。「天候や土壌の自動監視システム」「作物の病気を診断するチャットボット」の2つは、農業従事者の業務をサポートしてこの課題を解決できる。

フィンテック

もう一つの注目分野はフィンテックだ。インドネシアで銀行口座を持たない大人は6,000万人以上と言われており、金融へのアクセスの確保は大きな課題になっている。コンテストでは「個人と中小企業向けの債務整理サービス」「教育機関向けオンライン決済システム」の2つがファイナリストに選出され、金融サービスにアクセスしにくい人へのアクセス改善を進めるアイデアが注目された。

その他ファイナリスト

注目分野以外にも健康管理や教育に関するアイデアも応募があり、「アプリ連携型のマスク」「オンライン学習プラットフォーム」がファイナリストに選出されている。前者は抗菌加工・カーボンフィルターの高性能マスクと、リアルタイムの空気汚染情報を通知するアプリをセットで提供することで、都会部の健康問題に取り組む。後者は子ども向けのオンラインコンテンツや家庭教師マッチングができる学習プラットフォームを提供し、教育へのアクセスを改善する狙いだ。

ソーシャルイノベーションの多くは社会課題解決を優先しているため、貧困層や障碍者など社会的に不利な立場にいる人から収益を得ることが難しいビジネスモデルも存在する。課題解決の効果を最大化するためには、持続可能なビジネスモデルや人材の確保、そしてそのための初期投資が必要だ。今回の事例のように企業や大学によるスタートアップ支援が広がり、多セクターが共同して、ビジネスによって社会課題を解決する動きの拡大が期待される。