ERP(Enterprise Resources Planning)とは、日本語で「企業資源計画」と呼ばれ、会計、在庫、購買、販売など企業の基幹情報や経営資源を一元管理し、効率的な経営を図る経営手法のことを指す。
企業の状況を正確かつタイムリーに把握するためにも、情報の一元管理は大切だが、ITスキルがない人にとってはERPソリューションを使いこなすのが難しい。また、識字率の低い新興国では、取引内容を文字で記録することが困難な場合もある。誰もが簡単に使えるデータ入力システムはないだろうか。
バングラデシュの会社Hishab Ltdは、あらゆる電話で利用できる、世界初のボイスユーザーインターフェースのERPソリューションを開発した。利用者は電話に向かって話すだけで取引内容などを記録できるため、企業の発注や売上管理の簡易化が期待できる。
たとえば、お店の人が品物を売ったときに「Aさんにジャガイモを10kg、ツケ払いで売りました」と音声を入力すると、お店の人とAさんの電話に取引内容を確認するSMSが送られる。お互いが内容を承認した後、Aさんの電話には適宜、取引内容の通知が送られる。
バングラデシュの識字率は、改善傾向は見られるものの今日でも60%程度だ。その為、ビジネス間の取引において文字で内容を記録する事が困難な場合がある。また、ツケ払いが頻繁に行われるバングラデシュでは、特に消費者側に読み書きができない人が多い為、実際の支払いの際に商店側とトラブルになる事が多いという。後の支払いの際にトラブルを引き起こさないためにも、お互いが取引内容を正しく把握することが大切である。
同社のERPソリューションはマイクロファイナンス機関にとっても有用だ。世界的にファイナンシャル・インクルージョンの動きが強まるなか、貧困層向けに少額の融資を行うマイクロファイナンスが注目されているが、金融機関にとって融資先が資金を正しく管理できているかは非常に気になる点だ。音声入力が可能になれば、読み書きが苦手だったり、ITスキルが低かったりするマイクロファイナンスの利用者でも、資金の出入りを細かく記録し報告することが可能になる。
同ソリューションには、すでにバングラデシュ国内で50万人以上のユーザーが登録している。2019年2月には、ミャンマーに本社を置くリンクルージョン株式会社と共同で、マイクロファイナンス利用者向けの経営支援サービスでの試験運用を開始することを発表した。現在ベンガル語で提供されているHishabの技術をビルマ語にも対応させるという。
「必要は発明の母」だと言われる。Hishabの音声認識技術も、新興国ならではのニーズに応えて発明され、かつ先進国でも十分に応用できる可能性を秘めている。1975年にゼロックス社がGUI(Graphical User Interface)を使ったデータ入力システムを発表し、その後アップル社がタッチスクリーンという入力装置を発表した。そしてついに、音声でデータを入力する時代がやってきたのだ。
【参照サイト】Hishab Ltd