カメや海鳥などの体内から多くのプラスチックが見つかる―そんなニュースがあとを絶たない。実際、海に行くとペットボトルやプラスチック容器、ビニール袋などのプラスチックごみがあふれていることがわかる。海洋に投棄されるプラスチックごみの量は少なくとも年間800万トン。このまま何の対策もとらなければ2050年までに魚の総重量を上回る、とする調査結果もあり(※1)、プラスチックごみの問題は深刻さを増している。
こうした問題の解決には、まずリデュース、その次にリユース、リサイクルが重要であることは言うまでもないが、一旦外に放出されてしまった散乱ごみは「回収する」しかない。ただ、筆者もごみ拾いはしているが、ごみを拾うことが中心になるとストイックな作業になってしまいがちだ。
そんなごみ拾いに健康的な楽しさをプラスした「プロギング(Plogging)」が今、世界的なブームになりつつある。プロギングはスウェーデンで誕生した取り組みで、「ジョギング(jogging)」と「plocka upp(スウェーデン語で“拾う”)」を組み合わせた造語だ。内容はいたって簡単。ごみ袋を持ってジョギングし、ごみを見つけたら拾うだけ。
インスタグラムでは、#plogging のハッシュタグがついた写真が現時点で約6万4,000件投稿されている。省略形である #plogでも約1万3,000件もの写真が投稿され、その数は日々増え続けている。
プロギングの良さは、なんといってもその取り組みの簡単さ。プロギングはジョギングからはじまっているが、必ずしもジョギングをしなくてはいけないわけではない。散歩でも通勤や買い物の途中でも良いのだ。ごみ袋がなければ、拾ったごみをごみ箱に捨てるだけ。道中の景色を楽しみながら!
プロギングはスウェーデンにはじまり、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、アメリカなど各国に広がっている。たとえばこれは、ドイツのニュルンベルクでの地元の人によるプロギングのようすだ。
こんなかわいらしいプロガーも。火曜日と木曜日の朝はごみを拾いながらジョギングとスクワット、ウエイトトレーニングをしているそう。「海にもいいし、健康にもいい!」
自分が拾ったものをインスタグラムにアップしている人も多い。つい「成果物」を見せたくなってしまうのがプロギングの面白いところだ。
プロギングを世界中でもっと広めようという動きもある。米国一の植物性飲料メーカーであり、Bコーポレーションの認証も受けているシルクは、2028年に開催される夏のロサンゼルスオリンピックで「プロギング」を公式イベントにするため、Change.orgで2万5,000の署名を集めようとしている。さまざまな競技会場で、競技と並行してプロギングを行うことを提案している。
「プロギングがオリンピックの公式イベントになることは、世界をより良くしていく大事なステップだ。」とシルクの親会社ダノン・ノースアメリカの対外コミュニケーション・シニアマネジャーのフィッシュゴールド氏。シルクは2018年の初めから、「ジョギング」と「ごみ拾い」という、すでに多くの人がやったことのある行動を組み合わせている点がとてもいい、とプロギングのシンプルさに共感し、活動の推進をしてきた。
古くて新しいエコアクション、プロギング。楽しくてシンプルなアプローチは、誰でもすぐに実践できる。一緒にプロギングした仲間や道中で見つけた「成果物」をインスタグラムに投稿すれば、世界中のプロガーとつながることもできる。
この記事を読んでいるあなたも、さあ、ごみ袋一つ持って、ランニングや散歩ついでにプロギングをはじめてみてはどうだろうか。
※1 エレン・マッカーサー財団、2016年1月世界経済フォーラム年次大会
【参照サイト】What Is Plogging and Why You Should Try It
【関連ページ】Bコーポレーションとは・意味