世界的に環境汚染問題として注目されているプラスチックゴミ。いま、世界各国でプラスチックゴミの削減対策としてレジ袋の全面禁止や飲料ボトルにデポジットを導入して回収するなど、さまざまな取り組みが行われている。
今回紹介するのは、仏教国タイならではのユニークな取り組みだ。米サイエンス誌の調査によると、海洋にプラスチックごみを排出している国は、第2位がインドネシア、第3位にフィリピン、第4位にベトナム、第6位にタイ、と東南アジアの国々が並んでいる。
そんなタイのプラスチックゴミの問題を受け、石油化学最大手PTTグローバル・ケミカル(PTTGC)は、タイの寺院と協力して地域で回収したペットボトルから作った再生繊維を使い、僧侶が着用する袈裟(けさ)を作っている。布にはペットボトルを再資源化した繊維に、ポリエステルと綿をそれぞれ30%混ぜたアップサイクル製品が使われている。
まず寺院に寄付されたペットボトルは、圧縮機で潰される。潰されたペットボトルはPTTGCによってタイの再生繊維メーカーへ運ばれ、再生繊維となる。最後に仏教徒である地域住民によって袈裟として縫われるという循環型の仕組みだ。
同社はこれまでに約557平方メートル分の布から、およそ400セットの袈裟を作ったという。袈裟には、肩にかける布と体に巻く布、体全体を覆う布の3種類あり、僧衣1セットには60本分のペットボトルが使われている。それぞれ1,500~5,000バーツ(約5千円~約1万7千円)で販売予定だ。
今回のアップサイクリングの事業は、2018年から開始されたバンカチャオ地区の環境を保全する取り組み「アワ・クン・バンカチャオ」プロジェクトの一部である。プロジェクトに参加しているチャックデーン寺院はもともと、落ち葉の堆肥化や、廃プラスチックを熱分解して石油に戻す取り組みなども行っていた。また、毎週末に寺院で市民向けに廃棄物処理の教育を行うなど、地域の環境問題解決に積極的に取り組んでいる。
タイでは少しずつではあるが、多くの企業がプラスチック削減に向けて取り組んでいる。タイのセブンイレブンでは使い捨てプラスチック袋の提供を順次廃止する方針を示し、また、ビニールの代わりにバナナの皮で野菜を包むスーパーなども話題になった。しかし実際に現地に行ってみると、まだまだ露店やスーパーでプラスチック容器が大量に消費されていることに衝撃を受ける。
それぞれの国によって国民の興味を引くアプローチ方法は異なるが、国民の94%が仏教を信仰しているタイでの今回のアップサイクル袈裟の取り組みは、改めてプラスチック問題を考えさせるきっかけになるのではないだろうか。
【参照サイト】PTTGC公式HP
【参照サイト】Bottling for Buddhism