コロナがもたらしたのは「修理」熱?ロンドンの“Repair Week”現地レポート

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2022年1月に国内の新型コロナ規制全面撤廃を発表したイギリス。3月中旬からは海外からの入国に際しても、隔離や検査が免除されることが発表されている。ロックダウンを含む規制を経て、「やっとコロナ前の日常が戻ってきた」と胸を撫で下ろす人も多い。

一方、新型コロナがもたらした意外なブームもあった。それは「修理」だ。London Recyclesによると、「75%のロンドン市民が新型コロナパンデミック以前よりも修理を頻繁にするようになった」という。これは外出自粛期間に自宅で長い時間を過ごしたのはもちろん、気候変動への危機意識が人々を後押ししたことが要因だ。街の風景は元通りに戻りつつあるものの、新型コロナ禍で「修理」のスキルを身につけた人々は、今後もモノを長く使うためのアクションを起こし続けるだろう。

そこで、London Recyclesが3月14日から20日にかけて「London Repair Week」を主催。currysとPRIMARKをスポンサーに迎え、ロンドン各地およびオンラインで修理のワークショップやイベントを企画する。実施されるのは、洋服の修繕から自転車の修理、家具や電子機器の修理までさまざまだ。

今回、筆者はロンドン市内の2箇所のワークショップを視察した。

古着に新たな価値を吹き込む「アイス・ダイ」ワークショップ
shop from crisis

筆者撮影

ホームレスの人々の就業支援やチャリティ活動を行うShop from Crisisにて行われた染色のワークショップ。白い洋服はどうしてもシミや汚れが目立ってしまい、販売するのが難しいこともあるが、美しいグラデーションで染め上げることで、新たなデザインの洋服へと蘇らせることができる。

london repair week

筆者撮影

「アイス・ダイ」とは氷を使った染色の方法のこと。洋服の上にキューブの氷を載せ、その上に粉末の染料を振りかける。氷が溶けるのと同時に色が混ざり合い、美しい模様ができていく。

自転車の不具合を気軽に相談できるコミュニティワークショップ
london repair week

筆者撮影

地域の人々によって管理されているKentish Town City Farmで行われたこちらのワークショップ。自転車の不具合をプロに相談することができ、その場で修理をしてもらえる。価格が通常よりも安価ということもあり、遠くから自転車で移動し、持ってくる人もいた。

london repair week

筆者撮影

自分が使っている自転車を持ち込むのはもちろんだが、ワークショップに参加した人の中には、「自宅付近に放置されていた自転車を修理しに持ってきた」という人も。放置自転車を蘇らせる場としてもワークショップが活用されていた。

このように、ロンドン市内では多岐に渡る取り組みが行われているが、London Recyclesはさらに「Repair Week」の期間が終わっても人々が修理を続けられるよう、下記を公開している。

  1. 修理ガイド「ロンドン市民のための修理ガイド」を策定。スマートフォンのイヤホンポートにごみが詰まったときの対処法、Tシャツに化粧品の汚れがついたときの落とし方、錆びた釘の取り方など、かゆいところに手が届くガイドがウェブ上で公開されている。
  2. 修理店リスト実際にモノが壊れて自力ではどうしようもないとき、どこに持っていけばいいのか。自転車、電化製品、家具、洋服それぞれの項目でショップの一覧を見ることができる。
  3. 修理ワークショップリストRepair Weekの期間のみならず、ロンドン各地で修理のワークショップを行っている店舗を紹介している。

EUのサーキュラーエコノミー政策ではすでに「修理する権利」が重要項目として挙げられ、循環を前提とした製品設計・デザインが模索されている。イギリスに留まらず、世界に「修理」の波が到来する日も近いだろう。一人でもくもくと作業するだけでなく、各地で地元の店舗やコミュニティが人々の修理のモチベーションを支える一助になっていくと良い。

【関連ページ】修理する権利
【参照サイト】Repair week – London recycles
【参照サイト】A quarter 25% of Londoners say they repair more since the pandemic

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