自分らしさの追求が、社会の持続可能性につながる。「Ecological Memes」が提示する、生き方のヒント

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気候危機や海洋プラスチック汚染、フードロスなど、あらゆる社会課題が深刻化するなか、最近ではそれらの解決に向けて消費者や起業家、投資家など様々な立場から行動を起こす人々が増えている。このままでは人類の繁栄は持続可能ではないということに多くの人が気づき始め、サーキュラーエコノミー(循環型経済)といった新たな経済概念に対する注目も集まっている。

しかし、実際に社会課題に向き合っている方の中には「自分たちの行動や取り組みが本当に課題の解決につながっているのか分からない」「様々な課題が複雑に絡みあう中で、何が正しい選択なのかが分からない」と感じている方も多いのではないだろうか。

そんな人に、社会との向き合い方や生き方のヒントを教えてくれるのが、エコロジーや生態系をテーマにこれからの時代の人間観やビジネスの在り方を探る領域横断型サロン、「Ecological Memes(エコロジカル ミーム)」だ。

Ecological Memesは、自然との共生や身体感覚への回帰、循環型の暮らしなどが広がっている現代において、生態学や複雑系科学、東洋思想や身体知性など様々な分野の知見を掛け合わせながら「エコロジー」という概念と向き合い、これからの時代の生き方や暮らし方、群れ方について学び合う探索型コミュニティとなっている。

同サロンを主宰するのは、世界26ヶ国を旅した後にImpact HUB SeattleやImpact HUB Tokyoにて社会起業家の支援に従事、現在は共創型戦略デザインファームのBIOTOPEで組織の変革支援に取り組んでいる小林泰紘さんだ。これまで「生態系とポストヒューマンセンタードデザイン」「自然と技術を融合させるバイオミミクリー」「循環型の暮らしと都市デザイン~人間・環境・テクノロジーの関係性から考える~」など、ユニークなテーマでサロンを開催してきた。

今回IDEAS FOR GOOD編集部では、小林さんに「Ecological Memes」の活動や個人としてあるべき生き方について話をお伺いしてきた。

「外」に向けた活動と、自分の「内」とのつながりを取り戻す

小林さんがEcological Memesの活動をはじめた背景には、Impact HUB時代の経験がある。当時、大きなビジョンを掲げて社会変革を目指す起業家の支援をしていた小林さんは、彼らとの出会いから大事なことに気づいたという。

「シアトルのImpact HUBで社会起業家の支援に関わる仕事をしはじめたのですが、そこで関わる人たちがとても生き生きとしていました。自分自身が作りたい未来を語り、そこに余白をつくってリソースを巻き込みながらビジョンを実現していくという彼らの生き方は、起業する、しないに関わらず生きていくうえでの大事なエッセンスだなと感じました。」

「一方で、社会のためにと頑張り続けて、気づいたら自分のWHY(なぜやるのか?)を見失ってしまい、燃え尽きてしまう人にもたくさん出会いました。その経験から、外側に向けてインパクトを起こそうとしている活動と、自分自身の内側とのつながりを取り戻すこと、オーセンティックなリーダーシップが大事だなと気づいたのです。」

Ecological Memes主宰者の小林泰紘さん(株式会社BIOTOPE)Photo by Nagisa Mizuno

そのつながりを取り戻すうえで小林さんが大事だと考えているのが、一人一人が日々の暮らしの中で感じている「感覚」だ。社会に対して何となく感じている違和感や、本当は大事にしたいのに大事にできていないことなど、自分の感覚と向き合うところからスタートし、その感覚を基点に未来を創り上げていくのがオーセンティック・リーダーシップなのだ。

結局は、今を生きるひとりひとりが自分の生き方や在り方をしっかりと見つめ直すところから社会の変革が始まっていく。その前提がEcological Memesの活動につながっていく。

エコロジーの視点からこれからの人間観を探る「Ecological Memes」

これからの時代の人間の生き方や在り方について、エコロジーや生態系の観点から探索するEcological Memes。なぜ小林さんは「エコロジー」という概念に着目したのだろうか。

「もともとバックパッカーとして旅をしており自然が好きだったというのもあるのですが、明治から昭和にかけての生物学者で、民俗学者、哲学者でもある南方熊楠(みなかたくまぐす)の思想に出会ったのが大きいです。彼はエコロジーを『自然環境のエコロジー』『社会のエコロジー』『精神のエコロジー』という3つのエコロジーとして提唱しており、明治維新による近代化の流れの中における自然環境の危機について訴えていました。」

「南方は、自然環境の危機は私たちの生き方や社会、精神のエコロジーととても密接に関わっていると言っています。意識が無意識から切り離され、理性が感性から切り離され、人という存在が自然から切り離され、根っこのない存在になっていく。その結果として、人間の在り方や精神性がとても危ういものになっていくと考えたのです。このようにエコロジーを捉えたとき、自分が生きてきた感覚とすごく近いなと思いました。」

「手つかずの環境は素晴らしく、それを破壊する人間は悪という捉え方ではなく、人間が生きるということは自然とすごく密接につながっており、その相互作用の中で環境というものが存在している。そこには自分たちの営みも影響している。その感覚でエコロジーを捉えることに可能性を感じたのです。」

人間と自然とを切り離した存在として考えるのではなく、相互に影響し合いながらその関係性の中で立ち現れてくる存在として考える。この関係性への着目が、これからの生き方のヒントになるというのが小林さんの考えだ。

人と環境との関係を再構築しようとする潮流

小林さんは、この「関係性」という点に着目して世の中の潮流を見てみると、そこには一つの大きなうねりが見えると語る。

「個人の想いを形にし、社会に実装していくためには、社会の潮流と個人が抱える内側のビジョンを統合する必要があります。そのために世界の潮流をセンシングしていると、人が生きるということや人を取り巻く環境との関係性を考え直し、再構築していくという大きな流れを感じます。循環型経済やサステナビリティの流れもそうですし、自然との共生、身体感覚への回帰、ウェルビーイングもそうです。」

「例えばインドでは、若い世代を中心にヨガといった伝統文化への回帰と再構築が起こっています。これらは個別に見ると様々な領域でばらばらに起こっているように見えますが、少し引いた眼で見てみると、人を取り巻く様々な環境や、地球との関係を今一度考え直していくという大きなうねりがあるのです。」

たしかに、循環型経済といったマクロの話も、ウェルビーイングといった個人の生き方の話も、突き詰めると人間と自然との関係をどのようにリデザインしていくかという点に行き着く。自然を開発や保護の対象として捉えるのではなく、人間自体も自然の一部であるという出発点に立ち、そのなかで一人一人がどのように振る舞うことが、自然という生態系全体に対してもっともよいアプローチになるのか、そこを考え直すという試みが、世界中で生まれ始めているのだ。

「人と地球を取り巻く関係性を捉え直すという動きは、人と自然とを分断し、自然を人がコントロールする対象として扱ってきた近代科学の方法や、過度の経済成長といった、無意識的に支配的になってしまっている考え方に対する違和感の表れでもあります。」

「言葉で要素還元的に世界を分解し、因果関係の中で『こうすれば絶対にこうなる』というものを突き詰め、理解しようとすることの限界が来ており、それをどう乗り越えるのかが今の時代のテーマなのです。その鍵となるのが、複雑なものをありのままに捉え、直感的に世界を把握しようとする東洋的な知性や、頭や言葉で考えるのではなく、身体感覚として感じていることを基点に思考や行動につなげていく『身体性』だと思います。」

「言葉は基本的にものを分け隔てるもので、そこには必ず順序があり、並べていくという作業が発生します。これはギリシャ哲学だと『ロゴス』と言われる領域です。欧州ではロゴスが近代科学とともに重視されてきましたが、一方の東洋思想では、ロゴスではなくものごとを直感的に把握しようとする『レンマ』的な思想を積み重ねてきました。そもそも『分からない世界』というものを認め、向き合っていくという生き方をするうえでは、レンマ的な世界観にとても多くのヒントがあります。それは人類が長い歴史をかけて耕してきた部分でもあり、特に日本にはそれらが文化として埋め込まれています。それらをどう取り戻すかが大事だなと思います。」

多様であることが、もっともシステム全体の持続可能性に貢献できる

人間と人間を取り巻く環境を、相互に影響し合う関係性の視点から捉え直すと言われても、具体的にどのようなスタンスで生きていけばよいのか、いまひとつイメージが湧かないという方も多いかもしれない。小林さんに、過去にEcological Memesが開催したサロンの内容から具体的な例を出してもらった。

第三回に複雑系科学をテーマとしてビンガムトン大学教授の佐山弘樹氏をお呼びしたのですが、そのダイアログの中で面白いなと思ったのは、複雑系のシステム全体のために、みんなが同調して同じ方向を向くのは本末転倒であり、複雑なシステムがより持続可能であるための一番の鍵は多様性にあるという話です。一人が全体のためにこうしなければいけない、という世界ではなく、一人一人が感じたままに違うことをする。実はそれが最もシステムが持続可能であるために大事なことだ、という話をされていました。」

ビンガムトン大学教授・佐山弘樹氏

そもそも複雑なシステムの中では、演繹的に「システムを持続可能にするためにはこうすればよい」という全体最適を設計することは難しい。全体最適の視点から自分が何をすべきかを考えるのではなく、あくまで自分の感覚を基点として行動していくことが、結果としてシステム全体の持続可能性につながる。これは、本当の意味で持続可能な生き方やライフスタイルを考えるうえでとても重要な視点だ。

では、多様に生きるとは、具体的にどういうアクションを指すのか。小林さんはこう語る。

「あらゆるものがSNSでつながり、多くの人は自分と興味範囲が近い人たち、フィルターバブルの中で生きています。トランプの選挙結果をリベラルの人が誰も予想できなかったように、グローバルなネットワークで情報がつながっている社会に見えて、実はすごく偏ってしまっているのが現状です。そのなかで、ちょっと異質なものや周りとは違うものに触れてみる。具体的に言えば、普段SNSでフォローしなそうな人をフォローしてみるといったことが大事です。」

「多様性については日本でもたくさん議論がありますが、単にジェンダーや国籍の問題ではなく、一人一人が違うことをする。そのためには、自分自身が自分の生きている感覚に基づいて大事なことを選択していく必要があります。それが結果として全体の多様性やレジリエンスを創っていくのです。」

同じ場所で同じ時間を過ごしても、一人一人感じることも持ち帰るものも違う。自分の感覚にシャッターをせず、自分自身が日々感じている感覚を突き詰めていけば、誰だってオリジナルになり、人とは違う存在になれるのだ。これが個としての多様性だ。

また、同じ価値観を持つ人同士の輪から抜け出して、普段は接しないような情報や人とも接点を持ち、関係性も多様にしていく。そうすることで、結果として自分という個はよりオリジナルになり、全体は多様になる。これを続けることが、システムの持続可能性に貢献する一番の方法だということだ。自分の行動が本当に社会をよくすることにつながっているのか分からず、立ち止まってしまっているという人に対しては、強く背中を押してくれるアドバイスだ。

「そもそも分からない世界がある」という前提に立つ

小林さんが多様性と合わせて大事だと強調するのが、「分からなさ」と向き合うことだ。

「いろいろなテーマで会を開催していて共通して出てくる内容が、『分からない世界と向き合う』ということです。例えば、第6回では『生命と日本文化』というテーマで、株式会社デラシネの代表で花人でもある山本郁也氏をお呼びし、お花を通じて自然との共生を考えるというダイアログを行いました。」

「お花には立てる花、入れる花があり、立てる花は、神の依代(よりしろ)として立てます。例えば床の間には神様が下りてくる目印としてお花を立てるのが古来の考え方なのですが、床の間は奥まっているので、このお花は基本的に前からしか見えません。後ろは、つくり手か神様しか見えないのです。180度向こう側には人の英知が届かない、そもそも分からない世界が存在していて、そこに余白をつくるのが生け花の源流なのだと。一方で、最近ではテーブルにお花が置かれ、360度化が進んでおり、どこからでも見えるようになっている。人はこの世界のあらゆることが分かるという前提で花も見られているのではないか、という警鐘がありました。」

第6回のEcological Memesの様子。左側が株式会社デラシネ代表・山本郁也氏

「すると、第5回に東洋思想の話をしてくださった高野山真言宗高福院で副住職をつとめる川島俊之さんが、実は仏教でも同じことが起こっているとお話されていました。仏教も、もともとは分からない世界を前提にしているのですが、近年の仏教ブームではこの世界をすべて理解するために仏教を求める人が増えてきている気がする。しかし、実際にはこの世界のすべてを人間が分かるという前提に立っているから、いろいろなものがちぐはぐしているのではないかと。」

「たしかに、スマホ画面の一分一秒を争い、いかにタイムシェアやマインドシェアをとるかといったことをずっと追いかけている現代の情報化社会は、『分からなさ』と向き合う耐性が落ちてしまっているのではないかと思います。でも、分かるものだけを前提に生きていると、頭で理解できる世界だけに閉じていってしまいます。だからこそ、分からないものにじっくりと向き合うことにこそ、新たな地平を拓く可能性があるのだと思うのです。」

「AをすればBになります、ということを把握したうえで方法論化し、再現性を保ち、大規模化してきたのが近代化だと思うのですが、それは現実をものすごく単純化しすぎていて、実際の世界はそうではありません。東洋思想のように、因果関係では紐解けない世界をつながり合いや、相互作用の結果として世界が立ち現れていくという世界観で向き合っていくのがエコロジカルな在り方のすごく大事な部分ではないかと思っています。」

この世界は、頭で理解するには複雑すぎる。そう語る小林さんは、「分からなさ」も含めて世界を受け入れ、そのなかでの自分の感覚や直観に基づいてアクションを起こしていくことが大事だと繰り返す。

「これは考えることをやめるということではありません。『頭で理解できる世界だけに意識を閉じていく』あるいは『分からなければ前に進めない』という観念を手放して、そもそも人智の届かない世界と共に生きていくことができるかが問われているのだと思っています。」

システムの内側にいる存在として、向き合っていく。

そもそも世界は分からない。その前提は、社会を「課題」と「解決」という枠組みで捉えようとする人には残酷に聞こえるかもしれない。そもそも課題を正しく設定すること自体が難しいということでもあるからだ。それでは、私たちはそもそも社会に対してどのように向き合っていけばよいのだろうか。

「システムの全体性を客観的に認知しようとしても、認知の限界を超えてしまいます。循環型経済も、それを全て頭で理解してから行動しようと思うと、たぶん難しい。第三者としてシステムを客観的に見ようとしてもそこに唯一の解はありません。」

「仏教哲学者で環境活動家でもあるジョアナメイシーという方が、『アクティブホープ』という本を書いており、彼女はつながりを取り戻すワークショップというものをやっています。アクティブホープとは、どのような状況でも前向きに関わっていくという意味です。例えば台風の被害を見ると心が痛むと思いますが、なぜその痛みを感じるのかを考えたとき、そこにはこうなってほしいという願いや、愛や感謝があるはずです。まずはシステムの一部に、その痛みを感じる自分がいるということに自覚的になることが大事だと。その痛みは自分の内側や他者、周りを取り巻く環境との関係性のなかで起こっているはずで、そのことに気づいて行動を始めるのが大事だということです。」

「逆にそのつながりがないまま社会のインパクトを追い求めてもしんどいですし、結局は目の前で認知できる範囲の課題をつぶしていくモグラたたきのような状況になってしまいます。それはそれで大事な側面もあるのですが、一人一人の在り方としては、いったん頭で考えることを手放して、身体で感じ、身体で受け取った情報を身体で処理していくというパラダイムが大きなヒントになるのではないかと思います。いきなり壮大なことをする必要はありません。自分が感じることを大事にし、それを自分の周りとの関係性の中で形にしていくという向き合い方が大事なのです。」

まずは自分が日ごろから感じている痛みや違和感を自覚することからはじめ、それができたら、小さくてもよいから自分の周りから行動を起こしていく。それを一人一人が積み重ねていけば、相互作用の中で個人、組織、社会へとつながっていき、結果として大きな変化となって立ち現れるのだ。

これは、プラスチック問題に対するアプローチを例に考えてみても分かりやすい。あらゆる要素が複雑に絡まり合うプラスチックの問題に対して、いきなり解決に向けたプランを作るのは難しい。しかし、たとえばテレビ番組で深刻な海洋プラスチックの問題を知ったあなたが、なんとなく罪悪感を覚え始めて、コンビニでプラスチックの袋を断り始めるとする。仮にコンビニの店員が1日に10人の客からあなたと同じように袋を断られたら、その店員は消費者の意識のかすかな変化に気づき始めるはずだ。そしてその変化を感じた店員の数が増えれば、店長に、そして本部にフィードバックが寄せられ、会社全体としてプラスチック袋の廃止が決まるかもしれない。そしてその会社の決定に追随した他の会社の動きが業界全体の動きとなり、国全体と動きとなる。このように、たった一人の小さな行動でも、それが積み重なることで社会の変革につながっていくのだ。

Circularの先にある、Thrivingを実現するためのRegenerative Leadership

小林さんが話す「つながりを取り戻す」という話は、新しい経済モデルとして注目を浴びている循環型経済、サーキュラーエコノミーの考え方にも関係してくる。

「最近はサステナビリティの流れのなかで循環型のモデルがとても注目されていますが、その先にはリジェネレイティブ(再生させる)という在り方があります。これは欧州で起こっている潮流なのですが、環境負荷を下げるためにマイナスをゼロにするという考え方はまだ人と環境がある意味切り離された状態で、その先にあるのが人間をともに地球の生態系を繁栄させていく存在として捉えるという考え方です。よく『Thriving(繁栄する)』という言葉が使われていますが、より再生性の高い在り方として、リジェネレイティブ・リーダーシップという概念が生まれ始めています。」

「これは、システムを外側から見て課題を解決しようとするだけでは乗り越えられないパラダイムに対して、システムの一部としてともに繁栄していくという生き方であり、在り方です。僕はよく『Circular to Regenerative(循環から再生へ)』という言葉を使うのですが、実際に欧州ではリジェネレイティブなビジネスモデルも出始めています。」

「たとえば、ダイクルというおむつメーカーは、土に還るおむつを作っています。循環型経済は『ループを閉じる』モデルなので、使い終わったものを回収し、リユースするといった発想になると思いますが、ダイクルでは、使い終わったおむつをそのままコンポストすると、それが土に還り、そこについた人の排尿が栄養となって植物が育ち、それを食べて育つ子供たちがまたそのおむつを使うというような、人間以外の取り巻く環境も含めてみんなで繁栄していくというモデルなのです。」

「これももちろんサーキュラーエコノミーとして捉えることもできますが、循環しているのは経済だけではありません。社会も地球環境も含めて循環しており、それによってともに繁栄するという世界観なのです。環境負荷を下げるために循環型モデルをつくるという発想ではなく、そもそも人間が地球とともに繁栄していくための営みをつくっていくという発想であり、リジェネレイティブ・リーダーシップとは、それを主にビジネスの文脈で個人が実践していくという意味です。」

自分とまわり、社会はすべて相似形

Thriving(繁栄する)という言葉には、Sustainable Growth(持続可能に成長する)でもなく、De Growth(脱成長)でもなく、人間も生物も自然も含め、誰もが共生しながら豊かになっていく、より包摂的な響きがある。よりThrivingな社会をつくっていくために、私たちができることは何だろうか。最後に小林さんに訊いてみた。

「IDEAS FOR GOODのようなメディアを読まれている方は、社会課題意識が高いと思うのですが、大事なのは、なぜ自分がその課題に興味を持っているのか、自分を突き動かしているのは何なのか、何に痛みを感じているのかに自覚的になることだと思います。」

「それは頭で考えても分からないので、身体感覚に意識を向けられるように余白をつくる必要があります。余白づくりには空間、時間、心の3つがあり、一番は時間です。日々忙しく生きていて自分の感覚に気を向ける時間がないという人も多いと思いますが、まずは毎日15分でもいいので、自分がシステムの一部として何を感じているのか、見つめ直してみるとよいかもしれないですね。」

「自分自身のこと、自分の周りで起こっていることは相似形になっていて、それと同じことが社会課題にもなっているのです。例えば、自然と共生するというのも新しい話ではなく、人間はそもそもそういう生き物です。私たちの体内には何億という微生物が生きていて、それがなければ生きていけません。自分の命が、すでにたくさんの命と共生しているという事実に気がついた時にどんなことを感じるか。持続可能な社会と向き合うということはそんなところからもはじまっていくのではないかなと思います。」

社会で起こっていることも、自分の体の中で起こっていることも、相似形。自分という存在は世界全体とつながっていて、自分の内側の変化は、相互作用の中でめぐりめぐって社会の変化となっていく。その感覚さえ持っていれば、自分の行動が社会のためになっているかどうかが不安になって、立ち止まる必要はない。自分の生きている感覚を大事にし、そこから生まれる行動を積み重ねる。それが、私たちが社会に対してとりうるもっとも優れたアプローチなのかもしれない。

将来は、Ecological Memesをグローバルな文脈と接続し、日本の伝統的な英知と掛け合わせながらプログラムを作っていきたいと語る小林さん。今後はトークイベントだけではなく世界各地を実際に訪ねる体験プログラムも実施したいという。

ますます複雑化し、深刻化する社会課題に対して個人や組織はどのように向き合っていけばよいのか。小林さんの話には、そのヒントが詰まっていた。Ecological Memesの活動に興味がある方は、ぜひいちど参加してみてほしい。普段所属しているコミュニティや組織を離れ、多様なバックグラウンドを持つ人と触れ合うことで、あなた自身の感覚や個性が研ぎ澄まされ、また一つ世界の多様性を積み重ねることができるはずだ。

※Ecological Memesでは、12月22日(日)に神奈川県の北鎌倉・建長寺にて「Ecological Memes Forum 2019 ~“あいだ”の回復~」を開催します。興味がある方はぜひこちらもご参加ください。(IDEAS FOR GOODは同フォーラムのメディアパートナーを務めています。)

【参照サイト】Ecological Memes