2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、2030年までにすべての人がきれいな水と衛生へのアクセスできようにすることを目標の一つに掲げている。ユニセフの発表によると、南アジアやアフリカの地域を筆頭に、いま世界の22億人もの人々が安全な飲み水にアクセスできていないという。
こういった状況を受けて、世界各国では「空気中の水分を飲料水に変えるパネル」や「電力を40%削減し、飲料水を生み出すエアコン」、「海水も飲めるようにする大豆油生まれの浄水フィルター」など、きれいな飲み水を確保するべくさまざまな開発が行われている。
そして今回、米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(以下、APL)が、薄い空気から飲料水を抽出する画期的な方法を発見した。この研究は、地球上でも特に乾燥した地域に飲料水を供給できる可能性があると発表している。
研究チームが使用したのは、非常に高い表面積を持つことで注目されている、有機金属フレームワーク(MOF)。MOF のスポンジのような結晶は、水をはじめとする化合物を捕獲して貯蔵し、放出することに使われる。高い表面積のおかげで、より多くの化学反応と分子吸着ができる仕組みだ。MOF1gの表面積は、サッカー場1面の広さに相当するという。
2019年にはカリフォルニア大学バークレー校が、MOF1kgを使用して乾燥した気候で1日約1,3リットルの水を生成することに成功しているが、さらに優れた集水装置を作るには、水の収着と脱着のバランス制御と特性をよりよく理解する必要がある。しかし、これまでその研究はほとんど行われてこなかった。
APLチームは今回、10種類のMOFの研究を行い、基本的な材料特性と吸収できる水分量を調査した。さらに温度や湿度、粉体層の厚さが吸脱着プロセスに及ぼす影響を調査して、一番優れた水収集能力を持つMOFを特定したのだ。発表によると、このMOF1kgは、1日に8,66リットルの水を生成できるという。
現在、研究チームは他のMOFも調査して、砂漠地帯などの乾燥した環境でのパフォーマンスと吸収を最適化するMOFに関する考察を続けている。
乾燥した地域に安全な飲料水を供給できるかもしれない、米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のMOF研究。今後が期待される。
【参照サイト】Saving the Planet, One Drop at a Time
【参照サイト】Water harvester makes it easy to quench your thirst in the desert
【参照サイト】Progress on household drinking water, sanitation and hygiene, 2000-2017
(※画像:ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所より引用)