ハンガリー、不妊治療の無償化へ。治療の医薬品をタダにする試みが始まる

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日本で不妊に悩み、検査や治療を受けたことがある夫婦は5.5組に1組という事実を、あなたは知っているだろうか?(第15回出生動向基本調査/国立社会保障・人口問題研究所/2015年より)不妊には晩婚化、ストレスによるセックスレスやED、子宮内膜症など男女共にさまざまな要因が影響している。

子どもが欲しくて始めた妊活だが、高額な治療費によって諦めなければいけなかったり、定期的な通院のために仕事をやめたりする人もいるという。Webメディア妊活ボイスのアンケート(2017年)によると、「妊活全般にかかった費用」は平均で約35万円、人工授精・体外受精・顕微授精のいずれかを経験した人に限ると、平均費用は約134万円だという。治療を続けてもいつ授かるかわからない中で、高額な費用を捻出し続けるのは精神的・経済的につらいことだろう。

そんな中、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相が、人口減少対策の一環として、将来的に国営医療機関での「不妊治療を無償化する」方針を発表した。その方針に向けた第一歩として、2月1日から不妊治療に使用される医薬品の無料提供を始めている。

不妊治療無償化

政府は「不妊治療院は国家戦略の中で重要」として、首都ブダペストの民間不妊治療クリニック4院と、首都以外の2院の計6院を買収、民間企業の不妊治療院への投資を行わないよう忠告した。関係閣僚によると、不妊治療の無償化によって2022年までに4,000人の誕生が期待されるという。

このように、各家庭でより多くの子どもを設けてもらうための試みを、政府は相次いで実施している。たとえば、4人の子どもを育てる母親の所得税を免除しており、3人の家庭も検討中だ。

これらの対策の背景には、日本と同様に「出生率の減少」という課題がある。ハンガリーの人口は現在980万人だが、公式統計によると出生数は年々減少している上に、過去10年間では何十万人もの国民が西欧を中心とする国外に転出している。そんな現状に対して「国としての経済力を強化し続けるためにできることは、政府が子育てをする家庭を支援することだ」と首相は述べた。

今回紹介したハンガリーの合計特殊出生率は1.48、日本は1.42(2018年)である。同じくらいの出生率のハンガリーが、国をあげて取り組む中、日本社会は、子どもを願う人たちに何ができるだろうか。人口減少対策として良い前例を見せてくれるかもしれないハンガリーの動きに期待したい。

【参照サイト】Hungary to provide free fertility treatment to boost population
【参照サイト】ハンガリー、国営医療機関での不妊治療を無償化へ 人口減少対策の一環
【参照サイト】第15回出生動向基本調査/国立社会保障・人口問題研究所/2015年
【参照サイト】高度不妊治療にかかる費用は平均190万円以上!約3人に2人は金銭面をネックと感じる
【参照サイト】平成30年 厚生労働省人口統計総覧

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