日本政府や地方自治体に対して気候変動への適切な対策を求めるため、Fridays for Futureが中心となり、4月24日に「デジタル気候マーチ(ClimateStrikeOnline)」が開催された。新型コロナウイルス感染症の広がりに伴う外出自粛要請を受け、今年はSNS上で日本政府に対し温室効果ガス削減目標(NDC)の引き上げを求めた。オンラインで行われるマーチとはどのようなものなのか?IDEAS FOR GOOD編集部は、Fridays for Future関東オープンミーティングとデジタル気候マーチ全国中継の様子を取材した。
社会に働きかける、世界150か国の若者たち
2018年夏に、当時15歳のスウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリさんが開始した気候変動への活動Fridays for Futureも、今では150か国まで拡大し、ヨーロッパだけでなく、アジアやアフリカ諸国など全ての大陸で学生が声を上げている。日本でも、北海道から沖縄まで25を超える地域で自主的に学生達が集まり行動を起こしている。なぜそこまで世界規模にムーブメントが拡大したのか。その理由の一つに、SNSでの拡散があると言える。Fridays for Futureは各国でTwitterやInstagramといったSNSアカウントを持ち、そこから情報を発信している。クールなデザイン性が、日頃SNSに触れる機会が多いデジタルネイティブ世代の目を引き、彼らによって情報がシェアされることも多い。
Fridays for Futureの掲げる目標は、地球全体の気温上昇を1.5℃に抑えることだ。今の状況が続くと地球の気温は2100年までに約3度上昇すると予測されており、このままでは自然環境はおろか、私たちの生活基盤の存続までもが危うくなってくる。温室効果ガスの排出源の80%以上はエネルギ転換部門、産業部門、運輸部門であり、家庭部門はわずか4.6%だというデータがある。この状況は、身近な生活の中で変えられるものではないため、Fridays for Futureは個人レベルの気候危機への意識を高めるだけでなく、社会システム自体の大転換に向けて活動を展開している。
具体的には、気候危機サミットといったイベントの開催や、政府・企業への提言などだ。実際に、Fridays For Future Tokyoはみずほ銀行に対して新規の石炭火力への融資を辞めることを求めて本社前でアクションを起こしたり、Fridays for Future Kobeでも神戸市に「気候非常事態宣言」を採択することを求める署名活動を実施するなど、各地で積極的な活動を行う。
Fridays for Futureの主体となっている高校生や大学生。
デジタルだからこそ実現した、拡散するムーブメント
今回はオンラインで開催された気候マーチ。目的は、温室効果ガス削減目標(NDC)の引き上げを求めることだ。IPCCの報告書によると、地球温暖化の抑制目標を達成するには、2030年までにCO2排出量を45%削減する必要がある。すでに70カ国以上がINDC(2015年に加盟各国が提出した目標草案)からの目標引き上げを実施する中で、日本政府が今回決定したNDCは、2030年度に2013年度比-26%の削減目標に据え置くというものであり、この決定に批判が集まっている。そういった状況の中で、環境問題への意識を高めていくため全国規模でのマーチ開催に至った。
では、実際にオンラインでどのようにマーチが行われたのだろうか?マーチの参加方法は、当日17:00にFacebookやInstagram、Twitter上で世界共通の「#ClimateStrikeOnline」と日本独自の「#気候も危機」のハッシュタグで投稿するというものだ。
モデルの水原希子さんもInstagram投稿で発信。
Fridays for Future Kyotoが主催したデジタル気候マーチ全国中継も行われ、東北から九州まで21の支部から60人のオーガナイザーが集結し、同時に300人を超える人々が視聴した。「What do we want?」「Climate Justice!」など熱い呼びかけが行われた。
デジタル気候マーチ全国中継の様子
Fridays for Future Tokyoはモザイクアートチャレンジを行い、「#FFFモザイクアートチャレンジ」と投稿されたデジタル気候マーチの参加者の写真を集め、一枚のモザイクアートに。
こうした活動を通じて、全国からたくさんの投稿がされ、開始1時間で「#気候も危機」がTwitterのトレンド入りを果たした。 今までリアルな場で行われていたマーチとはまた違う角度で環境問題への啓発に大きく繋がったと感じられる時間となった。
取材後記
私自身も以前気候変動マーチに参加し、同世代の環境問題への熱意と行動力にとても感化された。今回はオンラインでの開催であったが、環境活動を展開しているメンバーと話したり、意見を交換したりすることは、オンラインの強みだと感じた。また、開始1時間での「#気候も危機」のTwitterトレンド入りなど、デジタルネイティブとも呼ばれる世代が中心となっているからこそのオンラインムーブメントの強さを実感できた。
物理的に人と交流をするのが難しい状況下だが、こうしてオンラインの力を借りることでリアルの場以上に広い範囲で人と繋がることが可能になる。新型コロナウイルスで社会全体が揺らいでいる中だからこそ、気候変動に関するこれまでの社会の動向を振り返り、未来に向けた視点を持ってアクションを起こしていく必要を強く感じた。