「ネットで出会った人」が突然家に来たら?子供をネット被害から守る、NZ政府のキャンペーン

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「たった今、あなたの息子が私のことを検索しました」と裸のポルノ女優が尋ねてくる。見知らぬ中年男性が、「娘さんとネット友達なんですよ」と言ってくる。そんな想像したくない光景が目の前に広がっているとしたら──ニュージーランド政府が、ユニークな啓発動画を作り出した。

インターネットは私たちのコミュニケーションや情報収集にあらゆる革命をもたらし続ける。一方で、SNSでのトラブルや個人情報の流出、スマホ依存など、その危険性を挙げ始めたらキリがない。

2020年6月からニュージーランド政府主導で行われている“Keep it real online”は、子供の安全なネット利用を啓発するキャンペーンだ。計6週間にわたってテレビやSNS、新聞や雑誌、街頭まであらゆる媒体で広告を打ち、文字通り国中にメッセージを伝えている。

広告の中心となっているのは、「オンライン・グルーミング(性的虐待目的で子どもに近づき、信頼を得ようとすること)」「ポルノ」「ネットいじめ」「不適切コンテンツ」の4テーマに関する動画だ。今回はその中から、先の2つの動画をピックアップしてご紹介しよう。

01. 「娘さんと友達です」見知らぬ中年男性が娘を訪ねてくる


まずはオンライングルーミングに関する動画。見ず知らずの中年男性が「娘さんはいますか。」と突然家を訪ねてくる。母親が娘との関係を男に訊くと「セイラと僕はネット友達!」と違和感に満ちた若者言葉で答え、続けざまに自分は13歳などと主張する。

奥から出てきた娘は男の言動に唖然とし、ネットで仲良くなった「男の子」が目の前の気味の悪い男だという事実を受け入れられない。ナレーションによれば、ニュージーランドの若者のうち40%が、対面で会ったことのない相手とネット上で繋がりを持った経験があるという。

02. 「AVと現実は違う」ポルノスターが突然家を訪ねてくる


ポルノに関する動画は、全裸のポルノスターたちがいきなり玄関先にやってくるというパンチの効いた描写から始まる。ドアを開けた母親に対して彼らは「たった今、あなたの息子が私達を検索したのでやってきました。」と一言。「私たちのビデオは大人向けなんだけど、まだあなたの息子は子供だよね」「ほら、(ポルノでは)性的同意もしないじゃない?」と次々と語りかける。

ついに母親に呼ばれて部屋からやって来た少年は、目の前の彼らを見て言葉を失う。目を丸くして立ち尽くす息子に対して、性教育の必要性を感じて意を決した母親は「ネットであなたが見るものと、現実の違いを教える時が来たようね。」と語りかける。

どちらの動画も、インターネットを利用している子供が住む家に「ネット上の人物」が突然訪問し、初めに対応した親が驚いてしまう形で現実とネット世界の乖離を示したうえで、最後に親が子供と一緒に問題に向き合っていくことを決心するストーリーだ。

ニュージーランドらしいユーモアに溢れたショートムービーは、子供が拡張するネット社会の虚構と現実を正しく捉える為には大人のサポートが必要であることを軽快に喚起している。

小さな子供たちのインターネット利用が以前よりもさらに増え始めた今だからこそ、同キャンペーンのメッセージは強く響き渡る。国内での新型コロナウイルス感染症の拡大防止に成功し、新たな問題にも迅速に手を打つニュージーランド政府の動向から今後も目が離せない。

【公式サイト】Keep it real online

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