「月に住める」家とは?今秋、グリーンランドでミッション訓練を開始

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「月に降り立ってみたい」そんな願望を一度でも持ったことはないだろうか。NASA(アメリカ航空宇宙局)は2024年に月への有人飛行を予定しており、その準備を着々と進めている。

そんななか、デンマークの宇宙建築家セバスティアン・アリストテレス氏とカールジョアン・ソレンセン氏が、宇宙飛行士だけでなく誰もが月に住むための家を設計。グリーンランドで2020年9月からミッション訓練を行うことを目指し、クラウドファンディングを立ち上げた。

LUNARK

(c) SAGA Space Architects

アリストテレス氏とソレンセン氏は、デンマークのデザインスタジオ SAGA Space Architectsの設立者だ。両氏は2018年にヨルダンで開かれた火星基地建築コンテストで優勝し、その賞金と欧州宇宙機関(ESA)からの奨学金を元に、オランダの国際宇宙大学(ISU)で宇宙建築を学んだ経験を持つ。

今回両氏が設計したのは、「LUNARK」と呼ばれる2人用の家。プロトタイプは完成しており、クラウドファンディングで集められた資金を使ってLUNARKの建設を行うことを計画している。この家は、月で快適に過ごすことと、輸送のしやすさという2点に重きを置いて作られた。

月においては、食べ物や匂い、温度の変化が少ないことから、感覚がまひして認知能力が低下し、時間感覚の障害が早い時期に生じることが多いという。この単調さを解決するべく、サーカディライトパネルで太陽光のサイクルや気象条件をシミュレートしたり、サウンドスケープを再生したり、屋内の垂直農場を導入したりといった策を施した。

LUNARK

(c) SAGA Space Architects

また、LUNARKの構造は日本の折り紙にインスピレーションを受け、現代のアルゴリズム設計を組み合わせたものになっている。軽量で丈夫で断熱性があり、折り畳めることが特徴だ。折り畳んだ状態での大きさは一辺が2,23mの立方体で、広げると体積が5,6倍になり、重量は1,738kgである。

家の中にあるものは以下の通りだ。

  • 必要なものをその場で作れる3Dプリンター
  • プライバシー確保のために防音処理が施されたクルーキャビン
  • 新鮮な野菜を栽培できる小さな垂直農場
  • バッテリー充電のためのソーラーパネル
  • 外の世界をのぞける窓
  • そして栄養接種のための藻類リアクター

また、76個ものセンサーがLUNARKを追跡し、AIが異常や危険を検出することで家を安全に保つ。

LUNARK

(c) SAGA Space Architects

3カ月間のミッション訓練実施に両氏が選んだ場所は、グリーンランド北部。人口密度が低く、厳しい気候であることと、殺伐とした風景が月と似ているという。気温は-30°Cと大変低く、強風が吹くといった極端な条件がそろっている。

クラウドファンディングで集められた資金は、LUNARKの構造脚に20%、328枚の外側パネルに60%、ドアと窓に10%、インテリアに10%に分割される予定。5ドル(約530円)から出資を受け付けており、そのリターン(お返し)はシンプルな応援からコミュニティにアクセスできるメンバーシップ、LUNARKの壁への出資者の名前入れ刻印やポスターやパーカー、LUNARKのミニチュアまでさまざまだ。ミッション訓練中のデータは公開され、ミッション終了後も今後の研究に活用するとのこと。

月の上で誰もが住める、折り紙をモチーフとした家LUNARK。そして、グリーンランドで実施されるミッションと、その未来。なんともワクワクするプロジェクトが、これから始まりそうだ。

【参照サイト】LUNARK – Building and Testing a Moon Home for Everyone
【参照サイト】HUMANITY´S RETURN TO THE MOON
【参照サイト】Marstopia Architecture Competition
(※画像:LUNARKから引用)