足るを知る。四角大輔さんと考える、これからのライフスタイル【世界サステナブルトークツアーレポ#4】

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新型コロナ感染拡大で旅に出れないこんなときだからこそ、オンラインで世界とつながり、希望の光に目を向けたい。そんな想いで開催したのが、IDEAS FOR GOOD主催の5週連続のオンラインイベント「世界サステナブルトークツアー」です。行き先はオランダ、デンマーク、ニューヨーク、ニュージーランド、そして最後に日本を含むアジア諸国です。

ゲストの方々から現地のリアルなお話をシェアいただき、コロナ禍で生まれている新たなアイデアや人々の変化を見ながら、これからのサステナビリティを参加者のみなさまと一緒に考えていく、旅のレポート第四弾をお届けします!

集合写真

集合写真

6月3日に開催された第四回のゲストは、ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営む執筆家の四角大輔さんです。トークのファシリテーターは、IDEAS FOR GOOD編集長の加藤佑が務めています。

話者プロフィール:四角 大輔(よすみ だいすけ)さん

四角さんニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営む執筆家。エシカルな現場を視察するオーガニックジャーニーを続け、65ヶ国以上を訪れる。the Organic副代表、グリーンピース・ジャパン&環境省アンバサダー。 『人生やらなくていいリスト』など著書多数。公式メディア:4dsk.co

生まれて初めて「命が国に守られた」と、思った

新型コロナ感染拡大抑制の成功例として、ニュージーランドに、そしてアーダーン首相のリーダーシップに世界中から注目が集まりました。ニュージーランドは現在、新型コロナとの闘いを経て、世界に先駆けてある程度の日常を取り戻しています。コロナ禍にもニュージランドに滞在していた四角さんは一体、どんな暮らしをしていたのでしょうか。

四角さん:生まれて初めて「命が国に守られた」と、思いましたね。アーダン首相は「経済も大事だけど、一番大切なのは国民の命」と、優先順位がはっきりしていました。まだ死者がゼロのときに国のロックダウンを決め、国境封鎖も早かったんです。

僕が住んでいるのは、市街地から20キロメートルほど離れた場所です。場所にとらわれない仕事スタイルで、自給自足で生活しているため、普段から3〜4週間街に出ないなんてことはしょっちゅう。ロックダウンされてからも、実はそれほど生活に大きな変化はありませんでした。

四角大輔

四角大輔さん。イベント時間がニュージーランドの夜だったので、昼間の自宅前の写真をバーチャル背景に

自然との距離を近づけると、自分自身を取り戻せる

加藤:四角さんのライフスタイルの特徴は「自然との近さ」にありますよね。今回の新型コロナでは、都会のスーパーで買い溜めが起こるなど、多くの方が不安を抱えたと思いますが、その不安は自然との距離が遠いところから来ていたのではないでしょうか。四角さんが自然との近さから改めて感じた、自給自足生活の魅力はありますか?

四角さん:都会のノイズの中で暮らしていると、自分が何者かわからなくなってしまうときがありますよね。僕は東京のど真ん中のレコード会社で働いていたときも、オフィスまで30分、湖まで1時間の距離の部屋を借り、どんなに忙しくても自然の中に入っていたんです。それは「自分を取り戻すため」でした。

ニュージーランドに移住したのは、自分を24時間自然の中においておきたいと思ったのがきっかけです。自然の中でノイズレスな状態でいると、自然とつながり、どんどん自分自身のことがわかってきます。そうすることで、自分の身の丈を知り、傲慢にならずにいれる。あとは自然に入ると、どんなに寝てもとれない疲れが取れます。自分と自然との距離を近く保ってきたからこそ、僕はこうして生きてこれたのだと思います。

「自然」という言葉には、2つの意味があります。「ネイチャー」と「自分の本質」という意味です。自然(ネイチャー)とつながることは、自分の本質とつながることだと僕は思っています。英語の「down to earth」という言葉も、「地に足をつける」という意味の他に、「本来の自分にかえる」という意味があります。

メイドインアースな人間の決断が、自然を壊すものであるはずがない

四角さん:都会にある身近な自然は、大空と大地です。ビル街にいても真上には大空があり、都会のアスファルトの下にだって土があり、生命活動の源である微生物がいて、大地があるんです。それを、いかに感じられるか。

僕はよく「頭ではなく心で決めてほしい」と、言います。頭は大地から離れているので、頭で考えるものはあまり信用していません。一方で、体の真ん中にある心が持っている感覚はほぼ正しくて、心が違和感を感じるときは、大体間違っています。人間の体はメイドインアースなので、人間が心の底からやりたいと思うことは、本来サステナブルであるはずなんです。そもそも、自分が帰属する自然を、壊すはずがない。

加藤:いただいたご質問で「身近な生活の中で、無理せずサステナビリティを実践するためにはどうしたらいいですか」とありますが、まさに今の四角さんの話が答えですよね。サステナビリティのヒントや正解は、自然の中にある。重力に逆らって地面から離れれば離れるほど、動力が必要になります。たとえば大地から離れているものに飛行機がありますが、自然に逆らっていて、やはりどうしても負荷がかかってしまいます。

ニュージーランド

ニュージーランド

自然の中に入ることで、当事者意識が生まれる

加藤:参加者の方からの質問でもありますが、ニュージーランドの方も、やはり四角さんのように自然を大切にしているのでしょうか?

四角さん:ニュージーランド人は自然との距離が近いので、間違いなく当事者意識が高い人が多いです。自然と近い人は、壊れている様子がわかるから守ろうとします。海を守る先頭に立っている人はサーファーやダイバーが多いですし、山を守る人は林業に従事している人や登山家が多い。だから僕は、「自然を守ろう」と呼びかけるのではなく「自然の中に入ろう」と、言います。それは、みんなにまず当事者意識を持ってもらうためです。自然と断絶されてしまったら当事者意識は持てないですよね。

ニュージーランド人は「足るを知る」「身の丈を知る」が、できています。ニュージーランドは歴史も短いので「この国はもともと何もなかったんだから、そんなに多くのものを持たなくてもいいよね」というマインドを持っている人が多いんです。

そして本来は日本人こそ、世界でずば抜けてそうしたサステナブルなマインドを持っているはずです。戦後の大量生産大量消費で忘れられてしまっているだけで、ゼロウェイストやサステナビリティ、オーガニックなど今必要とされるキーワードは、実は江戸時代から実践していたのですから。

自分らしくいることで、人は必ず誰かの役に立つ

加藤さん:いただいたご質問で『四角さんは「地域の中でスキル交換をして生活している」というお話をしていましたが、たとえば病気や障がいがあり、自分が誰かのために、地域のために、できることがないと思ってしまい孤立感を感じている人はどうしたらいいでしょうか?』というものがあります。四角さんはどうお考えでしょうか?

四角さん:僕が唯一誇れることは、冷静な目で自分を見ていて、自分の身の丈をわかっていることです。「自分はこれはできるけど、これはできない」と、理解している。なんでもできる人なんて、世の中には存在しません。

人間が全員歪(いびつ)で、まん丸や真四角の人がいないことには、意味があります。パズルをイメージしてみてください。みんな無茶苦茶な形をしていますよね。でも、無茶苦茶だからこそぴったりハマるんです。自分のことを理解し、本来の歪な形で生きることが、自分の役割なんです。つまり、自分らしく生きることで、人は必ず誰かの役に立てる。自分をさらけ出すことで、誰かのピースにぴったりハマって、支え合うことができる。

ちなみに、ここのコミュニティでもっとも活躍し、尊敬されているのは「優しい人」です。「思いやり」や「愛」は誰もが持てるスキルであり、もっとも人の役に立つスキルなんです。

四角さん

四角さん(2019年2月のイベント時撮影)

これからのライフスタイルに大切なのは「足るを知る」こと

加藤:アフターコロナに四角さんはどんなビジョンを持っていますか?

四角さん:僕は、こんな世界になるという「予測」よりも、こんな世界になってほしいという「願い」が強いんです。これはすべての悲劇に当てはまる理論ではないですが、今回の新型コロナでも、経営者の身の丈にあっている大きさの会社や、家族経営などのシンプルな形態でやっていた人など、「足るを知る」を実践していた人たちは被害が少なかったように感じます。

「大きなもの」「速いもの」「複雑なもの」は、いらないとずっと言ってきましたが、改めて今回の新型コロナを受けて、より自分の身の丈に合わせるように様々なものを削ぎ落としました。これから大切にするべきなのは「スモール」「スロー」「シンプル」という3Sです。

実は新型コロナが広がるまでは、環境を守ることに対して諦めの気持ちも少しあったのかもしれないと気づきました。今回が、僕が生きているうちで「最後のチャンスかもしれない」と、思っています。だから僕は「諦めること」をやめて、粘ることに決めました。これからはより、強くダイレクトなメッセージを発信していきます。

編集後記

イベントは終始、四角さんがつくり出すあたたかい雰囲気の中行われ、イベント後の懇親会でも質問が絶えず盛り上がりました。四角さんが、質問をしてくださった参加者一人一人のお名前を丁寧に呼び、その人自身の人生に熱く向き合う姿がとても印象的でした。

「自然の中に入ることで、当事者意識を持てるようになる」「自然とつながることで、自分自身も大切にできる」「自分を知り、ありのままで生きることで、誰かの役に立つことができる」。コロナ禍のステイホームで自分の内側と向き合う人が増えたからこそ、今回の四角さんのメッセージが心に刺さった方も多かったのではないでしょうか。

次回はいよいよ、サステナブルトークツアーも最終回。ゲストはマザーハウスの山崎大祐さんです。次回のレポートもお楽しみに!

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