歪んだパール、アワビの殻を材料に。長崎・壱岐の島のエシカルアクセサリー「kikirico」

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広大な海に囲まれた島国・日本。近年、気候変動の影響でサンゴ礁が死滅するなど、生態系への問題が浮上している。先日も日本の大手海運会社が運行する貨物船がモーリシャス沖で座礁し、およそ1,000トンもの重油が海に流出。その影響で、サンゴ礁をはじめとした周辺地域の生態系への悪影響が懸念されている。こうした環境問題から、「自然」そのものとの向き合い方を再考する必要性が強まっていると言える。

長崎の壱岐

「kikirico」は、長崎県の小さな離島・壱岐の島の魅力ある様々な自然物を使ったアクセサリーブランドだ。ブランドを立ち上げたデザイナーのiiiimiiii(イミ)氏は壱岐の島で生まれ育った。貝やシーグラス、真珠など、壱岐には魅力的なものづくりの素材が豊富につまっていると感じ、こういった素材の魅力を活かすために試行錯誤の末、「再生」と「エシカル」をテーマにしたkikiricoを立ち上げた。

iiiimiiii氏自身、海洋汚染を身近に感じてきた。例えば壱岐の島でとれるアワビの貝の大きさは年々どんどん小さくなり、iiiimiiii氏が子どもの頃見かけていたような大きなものは現在では貴重なものになってきているそうだ。現地の海女さんからは、一見すると澄んで見える海の中で、海藻がどんどんと焼けていってしまっているという現状も耳にした。また、貝殻を拾っている夫妻も、最近では昔よく見かけた貝を見なくなったなど、海の変化を非常に敏感に感じている。

kikiricoでは、このような環境問題に触れる中で、大切な海の資源もこのままではいつか採れなくなってしまうということに問題意識を持ち、アクセサリーを通して壱岐の島の環境問題について発信している。

kikiricoのコンセプトは3つある。1つ目は「エシカル」の観点だ。歪みが生じたバロックパールや飲食店で出たアワビの殻など、規格外や廃棄されてきたものの個性を引き出し、ネックレスやピアスなどのアクセサリーに生まれ変わらせることで、その魅力を伝えている。

kikiricoのアクセサリー1

壱岐は全国でも有数の真珠の産地だ。kikiricoでは、歪みのあるバロックパールをこだわって使用している。バロックパールは、ひとつひとつに個性があり、唯一無二の形である。この個性的なひとつひとつの形が持つストーリー性は、ブランドのインスピレーション源となっているそうだ。また、壱岐の島の飲食店から出た天然のアワビの殻を集め、アクセサリーに使用している。加えて、白浜で採れた貝殻やシーグラス、色とりどりの鉱石など、壱岐の島だからこそ採れる魅力的な天然素材にも焦点が当てられている。

2つ目のコンセプトは、「タイムレス」。トレンドに左右されすぎず、伝統技法と時代の空気をミックスすることで時代を問わない魅力を発信している。自然な質感を活かしながらも、伝統技法や幾何学的なモチーフを盛り込むことで、ナチュラルにふれすぎない品のある質感を作り上げ、3つ目のコンセプトである「リュクスアンドシャビー」なものづくりを実現している。

kikiricoのアクセサリー2

こうしたこだわりのものづくりを通して、kikiricoでは商品売り上げの一部を海洋ゴミ問題に取り組む一般社団法人JEANに寄付している。

kikiricoの活動を通して、海に関わる方々と出会ったことによって、海洋汚染について考えさせられる事が増えたと語るiiiimiiii氏。海や自然からの素材を用いるkikiricoでの活動を通して、海に恩返ししたいという思いが日増しに強くなり、この活動を開始する事を決めた。こうした活動を続けることで、より多くの人に海洋汚染への関心が芽生えるきっかけを作っている。

kikiricoのアクセサリー3

少子高齢化や人口減少などの課題が顕著な離島である壱岐。スマート農業や再生可能エネルギーを活用など、壱岐の島自体もSDGsに積極的に取り組んでいる。そういった地域全体のサステナブルな意識も、kikricoの創作活動に繋がっている。

kikiricoでは、都会と離島の非日常の逆転をアクセサリーを通じてシェアすることもブランドの目的の一つとして行っている。iiiimiiii氏は壱岐で生まれ、都会に住み、同じだけの月日を過ごす中で、島の人は都会に、都会のひとは田舎に憧れるというように、どちらも非日常を欲していると感じたそうだ。そういった中で、島に当たり前にあるものを都会のファッションになじむようなデザインで提供し、田舎と都会で空気感をシェアできたらどんなに楽しいだろうかと思い立ち、kikiricoの活動を始めた。島にあたりまえに存在するものを使って都会に届けることで、新しいストーリーが生まれていくことに対して、関わっている島の方々も大変喜んでいるそうだ。

地域に根ざした天然資源の魅力を引き出し、次世代に繋がるものづくりを展開するkikirico。新型コロナウイルスによりなかなか旅へ足を踏み出すことが難しい中で、あなたもkikiricoのアイテムを身に纏い、壱岐の島の魅力に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

9月からは、福岡にてポップアップストアが出店される。お近くの方はぜひ足を運んでみてほしい。

場所 大丸福岡天神店 本館B1
日程 2020年9月30日〜10月6日
時間 10:00~20:00(※館の営業時間に準拠)

【参照サイト】kikirico
【参照サイト】kikirico – Instagram

Edited by Megumi Ito

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