11月のアメリカ大統領選挙に向けてさまざまな選挙キャンペーンが展開されている。しかしアメリカでは今、投票率が低下傾向にあることが課題となっている。2016年の米大統領選挙の全体での投票率は55.67%。世代別の投票率をみると、65歳以上が70.9%、45~64歳が66.6%、30~44歳が58.7%、そして18~29歳が46.1%だった。年齢が下がるほど、投票に行かないことが明らかになった。
これに喝を入れるのがNASA(アメリカ航空宇宙局)だ。NASAは2020年9月末に、宇宙飛行士が「地球外から投票する方法」をサイトで公開した。これまで宇宙ミッションは長くて数週間ほどであったが、これからは数か月にわたって地球を離れることになる宇宙飛行士が、それでも投票する姿を示すことで、人々に選挙への参加を呼びかけているのだ。
地球外から投票する方法として、まず宇宙飛行士は、ロケット打ち上げ前に連邦郵便はがき申請書で郵便投票(不在者投票)用紙を要請する。そして宇宙ステーションのコンピューターから投票。NASAのジョンソン宇宙センターがあるヒューストンに住民票がある場合は、テキサス州と国際宇宙ステーションでやり取りして投票することになる。実際に、今回の大統領選挙では宇宙から投票するとして、宇宙飛行士の一人であるケイト・ルビンス氏が動画を公開した。
「民主主義に参加することは大切で、宇宙から投票できるのは名誉なことです。私は11月に投票しますし、皆が投票することが重要です。宇宙から投票できるのだから、地上でも投票できるはずです」同氏は、2016年にも地球外から投票していた宇宙飛行士だ。
2020年7月には、ロシアの宇宙飛行士も憲法改正案に関する投票を地球外から行った。「近くの選挙開場に足を運ぶのは、大したことではない」そんなメッセージをはらんだ衝撃の取り組みである。
投票率の高さは、政治への関心のバロメーターとなる。植民地支配や圧政の苦しみを経験し、独立や民主主義を勝ち取ったばかりの国々では、投票日には投票所に長蛇の列が出来る。投票して、政治や社会に参加できることをありがたいと思っているからだ。
民主主義がなかった時代のことを学び、民意が反映される、よりよい社会を築いていくためには、有権者一人ひとりにその価値観を守り抜く気概が必要となる。
宇宙から地球を見渡すような、広い視野を持つことが、今求められているのではないだろうか。
【参照サイト】NASA
【参照サイト】The Census Bureau
Edited by Kimika Tonuma