世界にとっての課題であり、私たち一人ひとりにとっての大きな課題である「CO2削減」。2020年10月26日、日本政府は「2050年までの温室効果ガスの排出実質ゼロ」を目指す方針を発表し、その後、隣国の韓国でも2050年までにカーボンニュートラルを目指す方針が明らかになった。これからは、「環境先進国」と言われる欧州諸国だけでなく、ますます多くの国や地域での気候変動への取り組み強化が予想される。
この地球規模の課題解決に挑戦するべく立ち上がった企業の一つが、フランスの化粧品会社大手・ロレアルだ。同社は、CO2を原料とするプラ製のシャンプーボトルを発表。これは、CO2のリサイクルを行う米LanzaTechと国際石油資本の仏トータルと共同開発された持続可能な容器で、以下の3工程で製造される。
まず、LanzaTechは産業排出の炭素ガスを回収し、独自の生物学的プロセスを使用してエタノールに変換。次にトータルが、燃料製造サービスの仏IFP Axensと共同開発した革新的な脱水プロセスでエタノールをエチレンに変換し、化石由来と同じ技術的特性を持つポリエチレンを製造する。最後にロレアルが、このポリエチレンを使用して、従来のポリエチレンと同じ品質と特性を持つ容器を製造するという仕組みだ。
この容器は、2024年までにシャンプーとコンディショナー用ボトルとして使用される予定。同3社は、このような持続可能なプラスチックの生産拡大を目指して協力を続けていき、他社との協働にも期待を寄せているとしている。
日本でも近年、地球温暖化の原因とされているCO2を炭素資源と捉えて回収し、多様な炭素化合物として再利用することで、CO2排出量を減らすカーボンリサイクルの実現に向けた対策が進められている。資源エネルギー庁は2019年2月、CO2の分離・回収や、その利用に関する技術のイノベーション促進を目的として、カーボンリサイクル室を設置した。さらに、菅総理大臣の2050年までの温室効果ガス排出ゼロ宣言を受け、加藤官房長官は同日、「二酸化炭素を回収し、燃料や化学品に活用するカーボンリサイクルなど、新たな選択肢も追求していく」と述べている。
ロレアルとLanzaTech、トータルの今回の発表は、カーボンリサイクルに新しい道を開き、企業だけでなく、私たち消費者の環境への意識にも大きな刺激を与えてくれるものとなるだろう。
【参照サイト】LANZATECH, TOTAL AND L’ORÉAL ANNOUNCE A WORLDWIDE PREMIERE: THE PRODUCTION OF THE FIRST COSMETIC PLASTIC BOTTLE MADE FROM INDUSTRIAL CARBON EMISSIONS
【参照サイト】資源エネルギー庁にカーボンリサイクル室を設置します
(※画像:LanzaTech、メディアルームより引用)
Edited by Tomoko Ito