本来は食べることができたのに捨てられる。そんな食品ロスを減らしていくことは今の社会の課題だ。国連が発表したSDGs(持続可能な開発目標)のゴール12「つくる責任 つかう責任」としても掲げられていることだが、現状、日本では毎年約600万トンもの食品ロスが排出されている。
その原因の一つが、食品メーカーや小売業界に存在している商習慣、いわゆる3分の1ルール。賞味期限または消費期限までの期間を3等分し、最初の3分の1の期間内に卸業者は小売業に納品しなければならず、残り3分の2の期間内に店頭で売り切らなければならない、というものだ。
それぞれの期間を過ぎたものはその都度廃棄され、食品ロスとなっている。この商習慣を緩和しようと賞味期限を年月日から年月表示にするなど政府、業界をあげた取り組みが進められているなかで、自治体レベルで改善に取り組んでいるのが、京都府京都市だ。同市は2015年に「新・京都市ごみ半減プラン」を策定し、2000年比で2020年までに食品ロスを半減させるという目標を全国で初めて設定。さまざまな取り組みを行っている。その一つが、食品の「販売期限の延長」を要請することだった。
京都市は、市内スーパーなどで賞味・消費期限が残り3分の1のを過ぎた食品について、それぞれの期限の直前まで販売することを事業者に要請し、食品ロス削減をはかっている。対象は菓子パンやお菓子といった加工品や牛乳やヨーグルトなどの乳製品、かまぼこなどの魚肉加工品など幅広い。これにより、規定により「販売期限を過ぎたから」と捨てられていた食品が救済されるのだ。
2017年からこの取り組みは始まり、2020年は食品スーパー、百貨店に加え、コンビニエンスストア、ドラッグストアなど、66事業者827店舗が参加した。行政としては、購入促進のためのPOPの作成・提供、メディアへのPR を通じた消費者への普及啓発などを行っている。その結果,昨年度新たに取り組んだ事業者・店舗からは、約3~6割の廃棄削減が確認された。
2018年度に行われた実証実験の結果によると、こうした取り組みについて、9割以上の消費者が「よい取り組みだと思う」と回答。賞味・消費期限当日まで販売してもいいか、という質問に対しては、日配品で約9割、常温加工食品で約8割の人が「そう思う」と回答した。また、事業者側は、賞味期限の確認作業が発生するものの、発注や陳列など通常業務への支障は特になく、すべての加工品目で実施することが可能、と回答するなど、消費者、事業者から前向きな反応が得られている(※1)。京都市の担当者によると「事業者としても、食品をみすみす捨てるのはもったいない。できる限り売り切りたい」という反応が多いという。
食品ロス削減のためには、まず一人ひとりの意識改革が必要だが、買い物をする私たちが食品ロス削減のために賞味・消費期限間近のものを買いたい、と思ったとしても、まず売っていなければ協力することはできない。その点、今回のような取り組みを通して、期限間近の食品が販売されることが当たり前になれば、消費者にとっては食品ロス削減のために行動する機会を増やすことができる。
食品ロスというと、事業者のイニシアチブによるもの、と思われがちだが、今回紹介した取り組みのように自治体レベルでも推進することはできる。全国的にもこのような取り組みはめずらしく、京都市の担当者は「国が進める納品期限の緩和の取組とセットで進めていければ」と語った。
京都発の取り組みが、今後どう全国に波及効果をもたらしていくのか。今後の展開に期待したい。
※1 平成30年度 販売期限の延長等による食品ロス削減効果に 関する調査・社会実験 報告資料
【参照サイト】小売店での食品ロスの削減に向けた「販売期限の延長」の取組拡大中!
Edited by Kimika Tonuma