高校生のアイデアを形に。京都・亀岡市とBRITAに学ぶ官民連携のプラごみゼロモデル

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世界の海に漂っているプラスチックごみは、推定1億5,000万トン(※1)。プラスチック製品は丈夫で長持ちするために、一度海に流れついてしまうとほとんど分解されることなく、海洋生物の生態系や私たちの生活にも悪影響を及ぼす。そのため、今さまざまな国や企業が「いかに私たちの普段の生活でプラスチックごみを減らし、海に流出させないか」を考えて、政策として取り組んでいる。

そんな海洋プラスチック問題に対し、自治体としていち早く行動を起こしているのが京都府・亀岡市だ。同市は2018年12月に「かめおかプラスチックごみゼロ」宣言を発表し、全国で初めて「プラスチック製レジ袋提供禁止(有料でも提供しないルール)」を打ち出している。現在、亀岡市ではペットボトルの削減に向け、マイボトル対応型の給水スポットの整備と併せて、マイボトルの普及を目指している。ドイツ生まれの浄水器ボトルメーカーBRITA Japanと連携し、市内の高校生に向けて環境教育も行った。

さまざまな環境問題への対策が求められるなかで、現在の高校生はどのようなことを学び、どのようなことを考えているのだろうか。本記事では、2020年12月17日に亀岡市で開かれた、高校生による「プラごみゼロアクション成果報告会」のようすをお届けする。

※1 McKinsey & Company 2015

「環境先進都市かめおか」の教育

2018年の「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」では、多様な生態系を育む亀岡市の保津川を起点に、地球規模の問題となっている海洋プラスチック汚染の解決に向けた取り組みを進め、2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指すことが発表された。

これまで、廃棄されるパラグライダーの生地をつなぎ合わせた「FLY BAG プロジェクト」など、環境への取り組みにアートを織り交ぜたプロジェクトも行われている。

2020年6月には、ペットボトルの代わりとして、浄水機能を持つマイボトルを販売するBRITA Japanと環境および教育事業での連携を開始。その一環で「学習指導要領」および「エシカル消費普及・啓発活動(消費者庁)」に則った高校生向けの教材を作成し、亀岡市にある2つの高校(亀岡高校・南丹高校)で環境教育に関する授業を複数回にわたって行った。

環境教育の前提として、亀岡市の桂川市長は「プラスチック自体が悪ではない」としている。軽くて丈夫で何度も使えるプラスチック製品すべてを排除するのではなく、はじめから「使い捨て」が前提で作られるプラスチック製品をできるだけなくすことを目標としているのだ。

亀岡高校と南丹高校は、学校内の授業だけでなく、両校間でのオンラインディスカッションを行い、互いの環境活動アイデアを交換することもあったようだ。ここからは、高校生の発表を簡単に共有したい。

高校生は何を学び、どう行動したのか

問題を知ることから始め、行動につなげる亀岡高校

亀岡高校の発表のようす

亀岡高校の発表の様子

亀岡高校には、普通科と探究文理科の2つの学科があり、今回は探究文理科の1年生に対して全7回の環境に関する授業が実施された。プラスチックごみの現状を知ることから始まり、近隣の道路や河川を訪れたり、野外授業をしたりしたという。

生徒の一人は、普段歩いている通学路をよく注意して見てみると、ペットボトルやお菓子のごみ、缶、紙袋などが捨てられていることに気付いたと話している。ごみがよく捨てられる川辺を訪れたときに、ゴーストフィッシング(水中に放出・廃棄・投棄された漁具が水生生物に危害を与えること)についても知り、気付かないうちに自分たちが水生生物の居場所を奪ってしまっていることを知ったという。

また、意識調査として同校の1年生全員を対象にアンケートを行ったところ、全体的に、探究文理科で学ぶ生徒のほうが普通科よりも環境に対して意識して生活していることがわかった。

探究文理科の生徒の一人は「僕たち自身が、はじめから意識が高かったわけではないです。授業で学んだからこそ、環境の現状を知ることができたので、幅広い人に向けた学びの機会がもっとあるといいですよね。また、環境に関する活動を続けるにあたっても、人から肯定されることが多いと、意欲的に活動するきっかけになると思います」と述べている。

他の生徒も「今は、環境などの問題についてちゃんと考える方が評価されることもあります。友達には興味を持っている子もいますし、家族とも先日ご飯を食べるときにプラスチックごみの話をし、一緒に何か行動をしてみよう、となりました。これがもっと当たり前になってほしいです」と話していた。

大胆な発想で環境問題を発信する南丹高校

南丹高校では3年生人間科学分野選択者40名に対して、全12回の授業を実施。2020年7月に亀岡市がSDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業に選定されたことを受け、SDGsについて学びを深めることに始まり、「プラスチックごみ削減に向け、自分たちに何ができるか?」を原動力に複数のプロジェクトを立ち上げた。今回発表されたのは、そのうちの3つだ。

1. 影響力のある著名人に連絡を取り、環境問題について発信してもらう

アンケートで学校の生徒に「あなたにとって影響力がある人は誰?」「その人が環境問題に取り組んでいたら、あなたもする?」と聞いてみたところ、70%が取り組むと回答。実際は、環境イベントなどで好きな芸能人に会えるなら…… という回答が目立ったという。

芸能事務所に直接メールや手紙をした生徒もいる(現時点で返事はない)。2020年11月には、水生生物の生態系に詳しい人として「さかなクン」のかめおかプラごみゼロ講演会の手伝いもした。この活動について、亀岡市長は、「芸能事務所に直談判するなんて、大人ならついためらってしまうことをやる姿勢と行動力は、私たちも学びたい」とコメントしている。

2. マイボトルの普及動画をつくる

使い捨てプラスチックごみの削減の大切さと、マイボトルの便利さを伝えるためのビデオを自分たちで制作。学校の中で一番水を飲んでいる運動部の生徒たちに声をかけ、マイボトルを使って水を飲んでいる姿を動画に収めた。

南丹高校動画

南丹高校で撮影された動画の様子

3. 市内のマイボトル給水スポットを見える化する

マイボトルが普及しても、飲み物がなくなったら補充できる場所がなければ結局ペットボトルを買うことになる。そう考えて、無料給水スポットが探せるアプリ「mymizu」を亀岡市内で広げる取り組みも行った。東京に比べて格段に給水スポットが少ないことを知り、まずはアプリを普及できるよう、飲食店など給水スポットとなりえる事業者が見られるようなポスターも制作した

これらの一連の活動に対し、市役所やBRITA Japanのアドバイスも受けている。BRITA Japanのマイケル・マギー代表取締役社長は、複数のプレイヤーが協業して環境問題に取り組むコレクティブインパクトがプラスチック削減のために大切だと語った。

亀岡市役所での発表会

編集後記

何でも素直にやってみることの大切さ。今回の高校生の発表から学んだことだ。聞きながら、その活動が本当に環境負荷を減らしているのか、懐疑的になるあまり、小さなアクションでも軽やかに起こせなくなっている自分に気が付いた。さまざまな人のアドバイスを聞き、つながりをつくり、短期間で多くの行動を起こした亀岡高校と南丹高校の生徒たちに学ぶことは多い。

私たちにとって身近で、取り組みやすいプラスチック問題。亀岡高校の生徒が言っていたように、授業で取り上げられて初めて海洋プラスチック問題のことを知り、行動ができた人もいるだろう。IDEAS FOR GOODでは、より多くの人が行動しやすくなるようなアイデアを引き続きお伝えしていきたい。

【参照サイト】かめおかプラスチックごみゼロ宣言の背景

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