食品ロス削減と地方創生を同時に実現。三方よしのフードシェアリング「KURADASHI」

Browse By

日本では、年間600万トン以上もの食料が廃棄されている。これは、国民一人当たりに換算すると毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てるのと同じ計算だ。その中には、私たち消費者に全く届くことなく捨てられる食料も含まれている。例えば、メーカーから出荷されることなく捨てられる商品たちだ。

日本には、食品を製造するメーカーを対象に、3分の1ルールというものが存在する。これは、製造日から賞味期限までの期間の3分の1に達すると出荷ができなくなるというルールだ。これにより、まだ食べられるのにも関わらず捨てられる商品が発生してしまう。また、季節もののパッケージも捨てられやすい。夏物としてデザインされた商品は、秋になると需要が無くなり、中身は食べられるにも関わらず在庫になってしまうケースもある。

このようにして生まれてしまう食品ロスを、持続可能な形で解決しようと取り組んでいるのが、「KURADASHI」だ。季節ものパッケージなどの関係で食品ロスになる可能性のある商品を、食品ロス削減への賛同メーカーより協賛価格で提供を受けて販売する。そしてその利益の一部をNPOなどの社会貢献団体に寄付する。これにより、ユーザーがお得にお買い物をすることが、食品ロス削減に加え、気軽な社会貢献につながる仕組みになっているのだ。

日本サービス大賞農林水産大臣賞を始め、数多くの賞を受賞してきたKURADASHI。そのサービスの原点や、学生との協働を通した新しい取り組みについて、広報の小山さんと、インターン生の木村さんにお話を聞いた。

左:小山さん 右:木村さん

左:小山さん 右:木村さん

多くの人を巻き込み、継続的に大きな影響を与えられるサービスを

KURADASHIは現在、ECサイトにて、食品ロス削減への賛同メーカーより協賛価格で提供を受けた商品を販売している。食品がその中心ではあるが、日用品や美容・健康に関する商品までラインナップは幅広い。最大で定価の97%OFFの商品もあるという。

さらに、KURADASHIの売り上げの一部は19の社会貢献団体に寄付される。買い物をするだけで、食品ロス削減に加えて社会課題の解決に貢献することができるということだ。

商品一覧

KURADASHIで販売されている商品。定価よりかなり低価格で購入できる。

買い物を通して支援できるNPO団体などのリスト

買い物を通して支援できるNPO団体などのリスト

Q. KURADASHIの事業はどのようにして始まったのですか?

小山さん: 代表の関藤の原体験に基づいています。阪神淡路大震災が起こった当時、大学生だった関藤が支援物資を持って震源地を訪れた際、一人でできることの限界を感じ、多くの人を巻き込んで継続的に大きな影響を与えられるサービスを作ることを決心しました。

その後、関藤は商社に就職。当時「世界の工場」と呼ばれた中国で働いていた際に、コンテナごと大量に捨てられる食料を目撃しました。これは大きな社会問題だと思った関藤が、事業者の在庫を買い取って販売するKURADASHIの仕組みを考えました。なので、食品ロス解決が軸ではありますが、関藤の震災での経験から「社会問題を継続的に解決したい」という思いが根底にあり、食品を売るだけではなく、売り上げの一部を社会貢献団体に寄付する仕組みを作ったのです。

多くの人を巻き込み、社会課題を継続的に解決したい──大学生の頃に抱いていた代表の想いは、「食品ロス」という社会問題を軸に、社会貢献団体支援を通して日本の多くの社会問題を同時に解決する仕組みを実現した。だからこそ、KURADASHIは株式会社として継続的に活動することにこだわる。

小山さん: よく私たちの事業を慈善事業のように捉える方もいるんですが、そこを敢えて「株式会社」として活動することにはこだわっています。社会課題を解決するには継続的な活動が重要であり、そのためには、社会性・環境性・そして経済性に優れた活動が必要だと考えているからです。

小山さん

小山さん

Q. KURADASHIのサービスに対して、お客さまからはどのような声が届いていますか?

小山さん: 消費者の方からは、普通に買うよりも安く買えて助かるということに加えて、気軽に社会貢献になることが嬉しいという声を頂いています。お買い物をするだけで食品ロスの削減になるし、代金の一部が社会貢献に使われる。買い物をするだけで少し良いことをしている気分になれるので、そこを評価して頂いています。「安い」をきっかけにKURADASHIを使い始め、使っていくうちに社会性も魅力に感じるようになってくださる方が多いかなと思います。

メーカーの方には、ブランドを毀損せずに在庫を減らすことができ、かつ社会貢献にもなるというところに価値を感じて頂いています。メーカーさんも、廃棄は出したくないけれども、別のルートで安く売ってしまうとブランドの価値を下げることになってしまう可能性もあり、悩みを抱えていらっしゃいます。

Q. コロナ禍でKURADASHIに何か影響はありましたか?

小山さん: コロナをきっかけに、コロナ禍で発生する食品ロスをどのようにして減らすかを考えてきました。例えば、学校が休校になって、使われるはずだった給食の食材が大量に余ってしまいました。また、コロナ禍で在庫が滞留し、売り上げが減少してしまっている食材も存在します。KURADASHIは、農林水産省のプロジェクトに参画し、こうした食品の販売を支援しています。

●農林水産省プロジェクトの一環で、コロナ禍で売り上げが減少した食材を販売する企画

農林水産省プロジェクトの一環で、コロナ禍で売り上げが減少した食材を販売する企画

学生と共に地方農家の食品ロスを解消し、地方創生に取り組む「クラダシチャレンジ」

KURADASHIでは、利益の一部を用いてクラダシ基金を創設している。基金を元にした活動の一つが、学生を地方農家にインターンとして派遣し、農作物の収穫をお手伝いする「クラダシチャレンジ」だ。

地方農家では、高齢化と人手不足により、収穫しきれずに廃棄されてしまう農作物が発生してしまっていることをご存じだろうか。クラダシチャレンジでは、学生が若い力を発揮して収穫をお手伝いすることで食品ロスを解消すると共に、地域創生を目指した活動に取り組んでいる。現在、クラダシで長期インターンとして活躍し、クラダシチャレンジにも参加している、大学3年生の木村さんにお話を聞いた。

木村さん

木村さん

Q. クラダシチャレンジの活動について教えてください。

木村さん: 高知県の北川村と、香川県の小豆島にそれぞれ1週間弱滞在し、北川村ではゆず、小豆島ではオリーブの収穫のお手伝いをしました。加えて、地元の小学生の生徒さんをはじめ、地元の方と交流もしました。

Q. 現地の農家さんは、具体的にどのような課題を抱えていらっしゃるんですか?

木村さん: 小豆島に関しては観光業が盛んで、比較的人口が多いのですが、オリーブ農家さんの作業は高いところに上る作業も多いので、高齢の農家さんにとって厳しい場面も多いのです。そのため、年によっては収穫しきれなくてオリーブが余ってしまうことがあります。さらに、収穫しきれないとオリーブの重みで木が病気になり悪くなってしまうそうなんです。

高知県北川村の方は人手不足がもっと深刻です。人口がもともと2500人ほどしかいない地域なので、ゆず農家を本職にしている人がほとんどおらず、それも高齢者の方ばかりです。実は、ゆずの収穫はとても大変です。棘がたくさんあり、高いところに実がなりますし、木が斜面に生えているので梯子の作業で怪我をしてしまうこともあります。高齢になるとそれが怖くなってしまうので、今後ますます人手不足が深刻になるのではないかと懸念しています。ゆず産業を地方を挙げて取り組みたいけれど、人手が足りないというジレンマがあると、地元の方がおっしゃっていました。

ゆずの収穫の様子

ゆずの収穫の様子

Q. クラダシチャレンジではどのくらい収穫ができたのですか?

木村さん: 北川村のゆずに関しては、11人で5日間活動して、1トンほど収穫できました。地元の方からは、収穫のお手伝いが助かると言って頂けたことはもちろんですが、学生との会話が楽しいと喜んでくださる方も多かったです。地元にとっては当たり前にあるオリーブやゆずの木の風景ですが、私たち学生にとっては初めて見る風景でした。なので、自然と「すごく素敵ですね」と、お話するんです。それを地元に住む人たちは新鮮に感じてくださったようで、誇りを持って仕事ができるとおっしゃってくださいました。

小山さん: 今回は、収穫したゆずの半分にあたる500キロをKURADASHIで販売しました。KURADASHIで販売した分の利益はクラダシ基金に回し、地方創生資金やフードバンク支援に使っています。クラダシチャレンジの学生インターンを派遣する旅費も、その基金から出ているんです。インターン生に収穫してもらって一部を販売し、その利益でインターン生の活動費を賄うというサイクルで、継続的に活動ができています。

収穫したゆず

収穫したゆず

外から見て気づく、地域の魅力

Q. 木村さんご自身は、クラダシチャレンジに参加してどのような想いを抱きましたか?

木村さん: 私自身、食べることが好きですし、もともと食品ロスに関心がありました。ただ、実際に地方に行って生産者側に回ってみると、食べ物に対する愛着がもっともっと沸いてきましたし、食べ物を無駄にしないことがとても尊いことだと感じました。食べ物がどのような形で私たち消費者に届くかを想像できるようになり、自分の価値観が変わったと感じます。

また、現地で色々な人たちとつながりを持つことで、第二の故郷のように、自分もその村の関係者の一人になったという感覚があります。この村の魅力をもっと伝えていきたいと思うようになりました。食品ロスの問題に気づくことだけでなく、やはり外部からその地域に行くことで、地域の魅力を発見することができます。学生ならではの感性を活かして、魅力を発信していくことができると思っています。

Q. これからクラダシチャレンジをどのように発展させていこうと考えていますか?

小山さん: 今後、一緒に取り組む地方自治体さんの数を増やしていきたいと考えています。農家さんによって収穫の時期は異なり、シーズンごとに必要になる人数も変わってくるはずなので。もう何年かしたら、学生さんたちがインターンシップをするように、「クラダシチャレンジ次はどこに行く?」と、色々な地域に行ってくれるような世界観を作っていきたいと思っています。

Q. 最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします

小山さん: 社会貢献という言葉だけを聞くと、敷居が高くて何をして良いか分からないと感じる方もいるかもしれません。しかし、KURADASHIでお買い物をするだけでフードロスの削減にもつながりますし、寄付という形で社会課題の解決にもつながる仕組みがあるので、少しでも興味のある商品があれば使って頂けたらいいなと思います。また、学生の皆さんには、クラダシチャレンジの活動へのご応募や、Facebookのコミュニティへのご参加をぜひお願いしたいです。

編集後記

今回お話を聞いて、ビジネスとして継続的に食品ロスを削減し、かつ地方創生など他の社会課題の解決も同時に目指していくといった、社会貢献をとことん追求する会社の姿勢が伝わってきた。

KURADASHI利用者の方や事業者の方、支援先のNPOの方やインターンの学生さん、そして地方農家の方々など、関係者全員に価値を提供する、三方良しならぬ全方良しな事業。インタビューを受けて下さったお二人の会話の中に咲く笑顔や、途中で顔を出して下さった代表の関藤さんのチャーミングでフレンドリーな様子からも、KURADASHIで働く方の和気あいあいとした雰囲気が伝わってきた。今後、多くの人を巻き込みながらソーシャルグッドを広めていくKURADASHIから目が離せない。

【参照サイト】 クラダシHP
【参照サイト】 クラダシチャレンジ公募ページ
【参照サイト】 クラダシチャレンジ学生コミュニティ
【参照サイト】 クラダシ基金について
【参照サイト】 受賞歴

Edited by Erika Tomiyama

FacebookTwitter